2010年8月25日水曜日

8月25日遍路行 十八日目 足摺岬を目指して

十八日目 8月25日(金)   足摺岬を目指して


 足摺岬を目指す最後の難関となる数日が始まった。歩く距離は90キロにもなる。とにかく長い。3日間をかけて歩く算段を立てたが、計画通りにいくか。その道中設計が難しい。まず宿泊場所の設定が重要である。単調な舗装道路の脚への影響もある。不安な中での1日目となった


① 6時より岩本寺本堂にて勤行、僕一人であった。お寺さんがどのようにお経を読むのか、順番を含めて良く分かった。お数珠の持ち方まで教えて貰った。6時30分朝食、おかずが多くて食べきれないくらいであった。珍しくゆで卵や納豆などが出ていた。みそ汁はナベで出ていた。2杯飲んだ。ご内儀が挨拶に又来てくれた。魅力的な人だった。詳しく道順を教えてくれる。名残惜しい感じになる。お檀家さんにはこのような感じで素晴しいお寺の奥さんと受け止められているのであろう。


② 6時50分出発、56号線をひたすら四万十市に向かう。窪川の町は朝靄に煙り、田園風景は幻想的である。田舎の朝は何時も気持が良い。しかしそれも大体8時30分までであり、陽は強くなると田舎は日陰が無くなる。黒潮鉄道沿いの各駅には「かつお一本釣」のPRが良く目に付く。どこもかしこもかつおである。土佐佐賀駅では一本釣、日本一とあった。片坂を過ぎれば「黒潮町」に入る。道は「拳の川」峠に向かって緩い登り道である。長曽可部元親ゆかりの古城の場所である。延々と続く登り道は相当しんどい。しかし脚に力が出る。とにかく今日は距離を稼ぎたい。行ける所まで行きたい。ピッチが上がる。岩本寺で戴いた朝飯の威力は大きい。



③ 10時30分自転車の3人娘が「ご苦労様です」と言って縦列で僕をさっと追い抜いて行った。格好良いのだ。「おいずる」という半袖の白衣で背中にはお大師様のご宝号、揃いのヘルメットで半パンで白いふくらはぎをむき出しに自転車をこいでいる姿は絵になる。四万十市、後29キロの標識が出る。四国の小京都、最後の清流、四万十川は近づきつつある。とにかく四万十川を早くこの目で見たい。


④ 高知市を出て以来海沿いにあるが56号線はとにかくトンネルが多い。それだけ山が多く、峠が多い証明である。トンネルを歩くのは怖い。90年代以降のトンネルはそれでも歩道が整備されているが、多くのトンネルは車の為であり、白い線を引いただけの歩道を歩くのは勇気がいる。車幅の広いトラックなどとすれ違う時は体を固定しなければ巻き込まれそうである。今日も熊井隧道、土佐佐賀トンエル、井の岬トンネルなど多かった。特に熊井隧道は面白かった。明治3年の竣工で今や人間用だけのの隧道であるが、「トンネルとは入り口は大きいが出口は小さいもんじゃ」と入り口から見た当時の人々が驚いたと由緒書きにある。これには笑ってしまった。伊田トンネルを抜けると黒潮町の中心地である。どうもこの辺から脚の調子が良くない。左膝がおかしいのだ。初めての経験である。無理がたたったか。痛いのだ。上がらないから足首は引きずるようになる。そうするとつまずくのである。後三日持って欲しいとお大師様にお願いした。間違いなく蓄積疲労だと思う。詳細計算していないが恐らく600キロ近くを連続で歩いているのだ。何か無ければ超人である。




⑤ 伊田は民宿が多い。恐らく足摺岬38番金剛福寺に至る格好の中継地なのかなと思う。携帯で宿を探すもそれが無いのだ。まず、電話に出ない、出ても何か、要領を得ない。素泊まりだけとか余り電話の応対も感じが良くない。少し焦る。長いやりとりがあって漸くネストウェストガーデンというリゾートホテルを予約出来た。8800円という。勿論食事は別である。ここを取り敢えず押さえて、道なりにある民宿をトライするが、あまり気乗りはしないものばかりだ。まず部屋のクーラーが100円で30分間利くとか、このような民宿はこちらから願い下げにしている。あまりにも惨めではないか。少々部屋代は高くてもエヤコンはお好きにお使い下さいというのが嬉しい。そういう民宿がまだこの地方には多い。そう言うところは食事も含めて今一つである。


⑥ 結局民宿は取れず、町の外れ、足摺に近いほうのホテル風の宿泊場所に15時15分到着した。海の真ん前にあるリゾート風の建物で円柱形の2階建てである。全ての部屋から太平洋が見える。大風呂は本当に海鳴りが聞こえる感じで大変良かったのである。レストランはイタリヤ風で確かに「レストランホテル」と言うだけの事はある。土佐観光の経営らしい。マスターが付きっきりでサービスしてくれる。思い切り食べた。何を食べたか書くまい。久しぶりに今日はイタリアンで決めた。しかし脚が痛い。ひきずっている。風呂に2回も入ってマッサージをしたりエアーサロンパスを使ったりして明日に備えたのである。


⑦ パソコンを打ちながら前の鏡に映る自分の顔を見る。髪は伸び、色は赤黒く、太っているのかむくんでいるのか、分からない自分の顔がそこにある。元々髪は天然パーマでこれほど伸びるともはやカールしたようで、白髪混じりの頭と金縁めがね、黒い顔のコンビネーションはどのように受け止められるであろうか。明日は歩けるであろうか。どこまで行けるであろうか。心配はあるが、後二つ38番金剛福寺と39番延光寺まではどうしても歩きたい。これで阿波、土佐の札所はすべて完了する。僕は完全に歩きで巡拝踏破したいのである。