2008年11月19日水曜日

11月19日(水)小中教員に負担感

・ 「小中教員に負担感」との見出し記事があり、「辞めたいと思った」人は6割に上ると言う。教育問題の専門家らで作る民間団体のアンケート調査でこのような実態が明らかになったと日経夕刊が報じている。
・ 調査は教育分野で提言活動をしている「日本の教育を考える10人委員会(委員長:佐和立命館教授)」がこの8月にインターネットで公立の小中の教員1200人から回答を得てまとめたものとのことである。
・ 若手の3人に一人は週20時間以上の残業で特に負担に感じている業務は「教員評価・学校評価」が80%と高く、次に「保護者・PTA対応」「会議」がいずれも75%と続く。私などはこの数値を見て「ウーン」という感じだ。
・ 子どもと向き合う業務以外はどうも「負担感」を感じているみたいだ。「教材開発・授業研究」は49%と低めである。これは「当たり前」だろう。教材開発・授業研究に負担感を感じるならば、もうこれは「教師と言う職業」から離れるしかあるまいから。
・ 「辞めたいとしばしば思う」「たまに思う」の回答が62%で理由は「業務が多忙すぎるから」が37%で20歳代では47%に上がっている。しかしこれら若者の言い様は何時もどの業種でも言われていることで特段目新しいことではないと私は断じる。
・ 確かに教師は「忙しい」ことは事実である。本当に様々なことに対応しなければやっていけなくなっているのが現実だ。以上の調査は公立の小学校・中学校の話であるが私立でも基本的には同じことだろう。「教師が忙しい職業」であることは間違いない。
・ まず学力対策の特別課外講習、生徒の日常規範指導、部活動、保護者への対応、校務運営に関わる仕事が「純粋の授業以外の時間」に当てられる。時間は人間24時間が一日の「持ち時間」だからこのうち家で「寝る8時間弱と法定義務勤務時間が8時間」で16時間は、全ての人に当てはまる、これだけは自然の摂理だから如何ともし難い。
・ 残りの8時間で往復の通勤時間をまあ2時間取ったら残りは6時間となる。このうちまあ3時間くらいはいわゆる残業、居残り、ボランティア活動等で取られるとしたらこれで「週18時間は残業」だから調査結果にある週20時間などの残業は有っておかしくはない。18時間、20時間の残業が良い悪いを言っているのではないが。
・ 私は言う。週20時間の居残り残表がしんどいから「辞めたい」と言う人は「早く辞めたほうが良い。」朝は定刻の8時30分の5分前に学校に入り、授業が終わりホームルームが済み、定刻の4時半が5分過ぎたらもう帰り支度をして門を出たいと思っている人も「早く辞めた方が良い」。
・ 「学校」というのはそういうところではないからだ。発達過程の児童生徒を集団で抱えて「教育と言う活動」を行っている極めて子どもの人生に大きな影響を有する「崇高な営為」であり、今日はノルマを果たしたから「終わり」というようなものではない。
・ 自動車のセールスマンのように「今日は3台売れたから上がり」とか自動販売機の在庫チェックで「今日は予定数を回ったから終わり」というような仕事ではない。夕方終業前の30分頃に教員同士が「今日は何もありませんでしたね」と言った瞬間、「グラウンドでボールが目に当たり、痛がってます」と緊急連絡が入る。
・ まず様子を見て救急車を呼び、誰かが付き添い病院に運ぶ段取りだ。そして直ぐ保護者に連絡しなければならない。一方現場に戻り状況の調査をして事態を正確に把握しなければならない。その瞬間勤務時間はとうに過ぎていると言うのが実態だ。
・ 「辞めたい」と思うのは「別に大きな理由」があると私は考えている。少なくとも「教職と言う職業を志した以上」前述のような「生徒との関わり」はまったくと言って良いほど理由にはなっていないと思う。先ほどの辞めたいと言う若い先生の気持ちもそうである。
・ 「辞めたい」と思うのは「攻められる」「責められる」「押し込まれる」と自分ではどうすることも出来ない「第三者の意向が働き」、これによって「自分に影響が及ぶ」という現象行為に「慣れていないから」だと私は考えている。
・ 学校文化は「教師は専門店の社長」で教科、専門分野で一人ひとり経験もキャリアも「教育観」も異なる。はっきり言って「ばらばら」である。それを「職員会議というフィルター」を通すことによって「皆で決めた」形で「一人ひとりの教育観を押し殺して全員でやろう」とのスタイルをとる職業である。「上意下達」というのはない。
・ ところが調査結果にあるように「教員評価」という外部の力が働いたり、「PTAからの圧」などの外部の力が作用してきたりすると、途端に「ぐらぐら」と来る。生徒を責める、攻めることは得意でも自分が「攻められる、責められることには慣れていない」から、「受身にはからっきし弱く精神的にダメージ」を受け易くなるのだと私は分析している。
・ 評価などが無い時代は幾ら働こうが早く帰ろうが給料が1円も違わないので「なんであんなにあの人は働くのだろう」と冷ややかに見ていたが、評価されるとなると途端に「隣の人が気になって」来るものだ。特に同期や同じ世代だと余計に感じる。
・ ところがベテランになると長い間の経験で幾ら保護者が文句を付けに来ても「馬耳東風」「聞き流し」「面従腹背」「ポーカーフェイス」「成りすまし」みたいな高等な芸当が出来るから若い教員ほどストレスをためないコツを体得している。要領も良くなり、今日は「早上がりだ」と言ってさっさと帰り、パチンコくらいに行っているのではないか。これも「ストレス解消法」だろう。
・ 若い教員の3人に一人は「辞めたい」と思っているのはしばらくの間で、そのうちに結婚でもして子どもでも出来ると責任が出てきて、「社会を見る目が備わってくる」。そうすると今まで言っていたことが「やばい、学校の方が断トツに居心地が良い」となってくる筈だ。
・ 折角得た教師の職を自ら去ることはなかろうにというのが私の感想だ。「上から辞めろ」と言われてもしがみついていた方が良い世の中になってきた。そして「外部からの力」に耐える「耐力と体力」を有する「自覚と努力」が必要だ。
・ 最大の効果ある方法は私の下で数年「鍛えられる」ことだ。私の下で数年持ちこたえることができたら大げさな話、「世界中何処でも通用する組織人」にはなれる。それは保障しよう。「頑張って欲しい、若い先生方」「辞めるなど考えてはならない。」待てよ、本校でもアンケート取ってみるかな?