2009年2月6日金曜日

2月6日(金)教育バウチャー制度

・ 昨夜のブログに引き続いて「橋下知事を取り上げる」。とにかく面白い。反対勢力となった府立高校の校長先生に対して「どうやって首をとるか」と発言した知事は、一夜あけた2月4日になっても「怒り収まらず」発言はどんどんエスカレートしていく。
・ 今度は「教育バウチャー制度」を出してきた。最もまだ内部で「私学課が検討中」のものが怒りに任せて「口から出て来た」のか、「改めて指示した」ものかは良く分からない。
・ 橋下知事は「公立エリート校構想」に反対する府立高校長の70%が反対するアンケート結果を引き合いに出して「スポーツ、勉強を伸ばす気がないからあんな事を言う。府民を冒涜する校長がはびこる公立高校は抜本的な改革が必要」と発言した。“はびこる”との表現も過激だ。普通“はびこる”を使うのは「悪や黴がはびこる」だから校長先生は「悪か黴」である。
・ こうも言ったらしい。「駄目な公立はもうね、廃校、廃校!」「公立も私立も甘えたところは淘汰する、きちんとした形をとる!」と。そして究極が以下の発言だ。「大阪の高校でバウチャーをやり基本的に同じ料金で好きな私立、公立に行けるようにしたい。」「授業料格差を無くすことで公私間を競争させ、甘えた学校は淘汰する!」と発言されたそうだ。すべて喋った感じだ。しかし勝手に私学が淘汰されるわけには行かない。
・ 最もこのためには財源が「数百億円かかると言う話もある」と知事は認識されており。私学課で極秘裏に検討は進んでいることが知事の発言で分かってきた。面白いことになってきた。
・ 自分で言うのもおかしいが私のブログをしっかりと「読み込んでいる人」は私の想定したことが如何に当たっているかお分かりだと思う。この「読みきる」ということが重要で「通り一辺目を通した」では分からない。すべて想定が的中している。
・ 「遂にバウチャー制度が表舞台」に躍り出てきた。以前にも触れているがこの制度のことを些かでも知っている人は「相当教育の勉強をしている教育オタク」と言うことになる。普通の人は知らない。教員でも知らない。最も私もたまたまだが知っていただけの話だが。
・ 大分前のことであるが何とかの報道番組でもコメンテーターはこのバウチャー制度を余り知らない様子であった。それが普通なのである。元々はアメリカや英国で実践されているらしい。一言で言えば「教育を受けるためのクーポン券」と言える。
・ 私は以下のように表現している。「戦時中の米の配給票」というと分かり易い。最も若い世代はお米が配給であったなど知らないだろうがね。少し格好をつけると「私立学校に通う家庭の学費負担を軽減すると共に学校選択の幅を拡げることで競争させ学校教育の質を引き上げると言う私学補助金政策」と言うことである。
・ 記憶力と教育に関心のあるお方は思い出されるであろうが日本では安部総理が熱心であった。その著書「美しい国へ」の中で教育バウチャー政策をとりあげている。しかしこれは影武者が書いたもので間違いなく安部さんの側近でお友達である当時の内閣官房副長官の下村博文衆議院議員がお書きになったものだろう。
・ なぜ自信を持ってそういうのかといえばご本人から直接聞いたからである。下村先生は東京都選出の代議士であるが実は「塾業界のご出身」で当然のことながら教育問題がご専門である。最近は余り出られないが「たけしのTVタックル」にも時々登場される。
・ このバウチャー制度は下村先生のご専門で諸外国も視察され本も出されているくらいだから本物なのである。私は実は先生を囲む会のメンバーであり、浪速に来た時も「激励のお手紙」を頂いた関係なのである。教育関係で調べたい時に先生にお願いするとなんと文科省の係長から直接電話があってびっくりしたことなどもあった。
・ この教育バウチャーは安部政権の「教育再生会議」の目玉で2006年の「自民党総裁選の争点」にまでなったが安部さんの「美しくない辞め方」と当時の文科省が「教育格差を拡大させる」と言って「お倉入りになった代物」なのである。
・ 教育バウチャー制度は特にアメリカで広まってきたがその歴史は古く、その思想根底は「人間は教育を受ける権利がある」、「しからば補助金を出すから子どもを学校に行かせなさい」とするものである。
・ しかし本格的に成ってきたのは1990年代で米国のミルウォーキーやクリーブランド市である。しかし本格的なものは、案外知られていないのであるが前の大統領ブッシュ氏が2004年に全米で初めて連邦資金を使って始めたものなのである。
・ 背景には地域の教育を担ってきた「公立学校の質の低下に危機感」を抱いて新たな教育施策を模索する中で生まれてきたものである。賛成派は「バウチャーの配布で学校は多くの生徒に来て貰うべく教育の質の向上に努力するだろう」と言うものであり、批判派は「私立学校のエリート化を加速させ学校格差を拡大する」ものという。
・ このように「バウチャー制度は議論の過程」にあり様々な考えが出ている。何でも同じで「誰かが賛成と言えば必ず反対とのろしを上げる人が居る」ものだ。バウチャーというクーポン券で補助金を公私間で同じにしても本当に公立の底辺校に誰が行くのか、「一部の人気校に生徒があつまる」だけではないかとの疑問もある。
・ 「生徒の自由選択」だから学校側は「定員管理」は出来ないわけでそれをしたらバウチャーの意味はなくなる。元々が「生徒による学校選択を前提」にしている話しなのである。私立の経営がバウチャーと言う補助金だけで「やっていけるのか」と「学費を上乗せしたら詐欺だ」と言われかねないしとにかくややこしいのである。
・ だから橋下知事は「中々難しい面がある」と発言されている。府の私学課は現在の公立の約15万円、私立の約60万円(本校はぴったし60万円)となっている年間授業料負担を均等化するのだから財源が「膨大なもの」となるのも分かる話だ。
・ そこで私学課は「経営に関する情報公開や教員の給与水準などの条件を満たした私立高校の在校生を対象に差額分をクーポン券などで保護者に支給」する案などが浮上していると言う。
・ しかし私は思うのだ。それではまだ不足だと。公立の授業料を上げるべきであると。大体大金持ちの家庭の子弟と厳しい家庭との授業料が同じと言うのはおかしいという「新しい考え方の導入」、加えて進学校といわゆる課題校との「教育公費コストは異なる」わけでそれらを反映した授業料に改めれば財源はいくらかでも捻出できるだろうと思うのだ。
・ 183万票をバックにした橋下知事が「公立高校の授業料を親の経済格差で差をつける」と言ったら本当にこの知事は「大したものだ。」果たしてそれが言えるかどうかだ。しかし橋下知事が遂に教育バウチャー制度を曲がりなりにも打ち出してきた。
・ 一筋縄ではいかないが今後何らかの動きが出てくるだろう。しかし私は前からこうなることは見えていた。驚くことではない。問題は本校の教職員が「他人事」ではなくて「自分たちの職場の問題」だと考えてくれるかどうかである。
・ 「面白いではないか」。朝学校に来て、教えて、昼食べて、夕方自宅に帰ることだけでは面白くもなんともないではないか。大阪は橋下知事の誕生で面白くなった。浪速も私みたいな理事長校長の誕生で面白くなったと感じてくれれば、そこは「些かでも心に余裕が出て来た」と言うことではないか。一緒に頑張っていこう。