2009年5月20日水曜日

5月20日(水)今、農学部が面白い

・ 「静かな毎日」である。妊娠中の女性教諭一人を除いて全員出勤してそれぞれが業務をこなしてくれている。「自宅待機中の生徒からは今のところ異常の報告は無い」。「ひやひや」の毎日である。気温よ、上がれと毎日出勤時に学院神社にお願いしている。
・ 神戸では治療に当たっていた病院関係者からも出たという。又大津市では「第一号の大学生感染者」だ。今まで高校生に多くて大学生に居ないのは何故だろうと思っていたがこれで納得だ。大学もクラブや集団行動はあるし高校生と年もほぼ同じではないか。この大学生、15日から18日に掛けて「神戸へ出かけた」とある。行かねば良いのに。
・ ところで大学生と言えば、最近「五月病」という言葉を聞かない。新聞記事でも出てこない。例年なら大体5月の連休を過ぎたら大学への新入学生や企業への新入社員の中には「こういう筈ではなかった」と言って「落ち込み」、「退学したり、退職」したりすることが話題になったものだ。
・ 100年に一度という経済不況が背景にあることと今年は連休前に「新型インフルエンザ」という爆弾が世界中に落ちたから「のんきなこと」を言っている暇もなかったのかも知れない。
・ しかし私は日本もミニバブルが米国のサブプライムローン問題を引き金にして弾けて、少し「落ち着いて」きたことが背景にあるのではないかと思っている。今の方が普通でちょっと前の方が異常と考えれば話のつじつまは付く。
・ 90年代後半のITバブル崩壊後、製造業を中心に「ミニバブル状態」が続き、元々我々日本人は「少しバブル状態の中」で生きていく方が心地よく感じる性向を持つ民族である。「少しくらいのお祭騒ぎが大好きな国民」なのである。
・ 「少子化傾向」は間違いない統計的事実であるが、「大学や学部は増え続いているというのも日本らしい現象」である。「1998年には604校であった4年制大学は2008年には765校と急増」である。コンビニをしのぐ伸び率ではないか。
・ 一方この10年間に「18才人口は162万人から124万人に減少」している。通常で言えば企業の採用などは「売り手市場」であり、何処でも入社できたのであるが必ずしも「雇用情勢の変化」で一方的に売り込める時代は去ったということか。
・ しかしある程度は企業も人材確保が必要なのであり、最低限の幹部候補生はとるにしても「どうでもよいような学生」は必要としなくなってきているのではないか。一つには「高齢者雇用促進法」の影響があるだろう。若者の仕事を年寄りが奪っていると言う人もいる。
・ 昨日のクローズアップ現代では「就活(就職活動)に奔走」する大学生の姿を追っていた。「正社員になりたい」との願望は極めて強い。「分かる」。卒業年次に正社員就職できなかったらその後の機会は大きく減じるらしい。
・ 「本格的に実力時代の到来」という気もする。本当に必要とされる人材しかチャンスはないという厳しい現実が待っている。「人材バブル時代の崩壊」と私は考えている。常に私は本校生徒にはこのような事を伝えているのだが彼らには切迫感がない。薄いのだ。
・ 「大学で何を学び社会でどのような生涯をかける仕事を持つのか」、ボツボツ考えよと声を張り上げるとちょっとの間は「静かになる」が、すぐ頭からははずれ目先のことに興味関心が行ってしまう。
・ 人生の分岐点になることは間違いない「大学選び」も生徒にはまだ「真剣み」が足りない。頭にはあるのだろうが頭の引き出しに仕舞っており動かそうとしない。だから「世相」に大きく影響される。
・ 大手予備校の調査分析結果によれば今年の大学受験は間違いなく景気悪化の影響をもろに受けているという。地元志向がますます強まり、「親元から通う大学」、それと大きな特徴は「記念受験の減少」という。
・ 「確実に受かる大学を選び」、「学部選択も減少」だという。大体受験料は一校あたり35000円くらいだから、それを気にして受験する大学学部を精選する傾向だというのである。統計的には一人6大学学部を受験すると言うからそれだけで21万円もかかる。「下宿」となると自宅通学の3倍以上は費用がかかるから大学進学は確かに「大変」なのである。
・ そのようにして「本人の意思で行った大学」が気に入らなかったといって「5月連休後のバイバイ」では親も泣くに泣けない。しっかりと「進路選択」を学校も何より本人が考えなければならない。
・ 今年の人気は「食への関心」から「農学部への人気」があり、「ノーベル賞受賞者」が出たこともあり「理学部」を中心とする理系人気だという。一時大人気を誇った歯学、薬学は惨憺たる志願者減となっている。一時期の薬学人気はすごかった。
・ 駿台予備学校の調査によれば完全に「理高文低」という。断トツに理学部、そして農林水産学部、看護保健学部、工学部、医学部の順番となる。文系では「教育学部」が強い。これらは明らかに社会の風潮というか世相を反映しており、当分この傾向は続くのではないか。又岩手県立医大、島根大、大分大など「地方の国公立大学」が伸びている。
・ ところで今まで定員割れに泣いていた全国42の都道府県にある「公立農業大学校」で今年入学者が急増しているらしい。16日の朝日が報じている。主に高校新卒者が学ぶ養成過程に前年度対比で190人増でやく1900人が入学したと言う。
・ 総定員に対する充足率は4年ぶりに8割だと言う。間違いなく背景には深刻な雇用不安があるのだと思う。今テレビでも時々放映するが「就農」が一種の「ブーム」になっている。「脱サラ」して農業をやるとか。
・ 羽曳野市にある「大阪府農業大学校」でも3年ぶりに25人の定員を満たした。農家出身が3人、農業系高校から3人だがそれ以外は「違う畑」からの参入組みという。高校は普通科で農業に興味を持って専門的実践的な知識を学び「休耕田」にチャレンジしても良いし、いまや大手企業が「農業の工業化」に取り組んでいる。私は素晴らしい着点だと思う。
・ 誤解を恐れずに言えば「大学に行かなくとも良い」時代になってきたということではないか。大学に行くことが輝かしい人生への切り札とはならないと明確になってきたのだ。元々そうであったのだが「誰もが大学に行く」時代は終焉しつつあるような気がする。
・ 「ファッション感覚」で大学に行っても無駄で意味はないのである。希望の就職先などあっても入れないだろう。そうなら畠で汗を流す方が良いと考える層が出てきたとしても不思議ではない。だから農学部や農業大学校が人気となる。
・ 日本は徐々に「常識の、普通の国」になってきつつあると私は思っている。それは「良い傾向」と思っているのである。今の激変は「胎動」である。新しい国、価値観への「生みの苦しみ」かも知れない。
・ 今「専修学校」化の動きが急であるという。専修学校から大学の3年生に「学部編入」するのが気が利いていると言うのだ。これも素晴らしい。実践を経験しさらに「上を究めたい」と考えた者が大学に進学するのだ。
・ 遅々として改革が進んでいないように見えるが、「どっこい」、よく観察すれば私はこのような兆候があちこちに出てきているのではないかと思うのだ。「そういうことも生徒には教えていかねばなるまい」。前述のクローズアップ現代でも企業は「即戦力」「実践力」を採用のキーワードだとしていた。どうしようもない大学生など、どの企業も組織体も採用などしないだろう。外国人、ベテラン、転職者、引き抜き、定年退職者、「労働力ソースはまさに多様化」してきたのである。