・ とんだ「連休」となっている。これではゆっくりと静養等と言ってられない。しかしこれも給料の内だ。毎日、テレビの報道と新聞記事を追って考えているのである。勿論話題は「新型インフルエンザ」問題であるが、まあしかしこの1週間の報道はすさまじかった。
・私は「パンデミック」という言葉を初めて知った。「世界的大流行」という意味らしい。面白いといっては「不謹慎」であるがテレビに登場するキャスターやコメンテーター、評論家、ゲストなどの人々は「大変な事態」と口では言っているがまるで顔には「緊張感」など伺えないのだ。
・ 唯一例外があの「横浜の私立高校の校長」だ。このことは後述する。まず国内で疑いのあった最初の人物は30日ロスから成田に降り立った25歳の女性だ。発熱があったというので簡易検査をしたら「陽性」、可愛そうにこの女性は千葉県内の病院に隔離、国立感染症研究所での精密検査待ちとなった。ところが結果は新型ではなくてA香港型と判明し、やっとこさ、解放された。しかし次第に舞台は盛り上がりを示していく。
・ 次が「高校生」だ。「厚生労働省は1日未明」にカナダから研修旅行で帰国した17歳の男子高校生が簡易検査の結果、「疑いが濃い」と舛添大臣自ら深夜の記者会見で発表。如何にも「大臣は興奮状態」という感じで、「横浜市の対応はなっとらん」と責め立てるおまけつきであった。
・ 何がなんでも「水際作戦」で食い止めることが「史上最大の作戦」とばかりで、どうしても第1号の感染者を早く確認したいとしか思えないような、ばたばたした対応にしか私には見えなかったが、こちらも「陽性」と出たと興奮状態だ。しかし疑いが出ては結果が違うのである。米軍基地の赤ちゃんも違っていた。
・ ちなみに連休入りの29日から今日までの「読売新聞の1面の大見出し」を追いかけてみよう。まず29日は「新型インフルエンザ宣言」、30日は「米で感染拡大」、1日、「警戒度5に引き上げ」、2日「感染疑い高2陰性」、そして今日は遂に「1面トップ記事から外れ」た。社会面を見ても同じようなトーンが分かる。
・ しかし今回の一連の報道で私が「感銘を受けたのは先の横浜の校長先生」だ。インターネット報道では「ハンカチで目をぬぐう校長」とか今朝の読売社会面までも「陰性、涙ぐむ校長」との大見出しだ。 昨日のテレビ「ニュースキャスター」でビートたけしが「何で泣くんだろうね、他の校長も泣くのかねー」などと何時もの「毒を放って」いたが、こいつらには学校の「校長の気持ち」は永遠に分からないだろう。
・ 1日深夜に大臣が緊急記者会見「疑いあり」と報道、これを受けて午前4時に学校に「タクシー」を飛ばして到着、その後「一睡もせず情報収集と今後の対応」に走り回っていたところへ、夕方5時30分過ぎ、「新型の疑いは晴れた」とまた一方的に厚生労働省は報道。
・ 駆けつける記者に囲まれて、正門付近で記者会見に応じた校長は「一時はどうなることかと思ったが・・・」と思わず「絶句」して涙ぐむのはそれだけ「責任感が大きい」からだ。「これで少しは眠れる、食事ものどを通るかな」と言われたとある。
・ この学校には深夜の会見があった朝方6時ころから「生徒はどんなルートで通学しているのか、(家の前を通ったのか・・・これは私の想像)」「菌をばら撒いていないか」などの苦情が50件も寄せられたという。住民というにはこういうレベルの人間もいるものだが、それは責められないだろう。それが「世間というもの」だ。仕方がなく、それはそれで学校の校長が対応するのだ。
・ 目が引きつり、顔色が青ざめて対応する校長、校長の相手をする対象はすべてである。それを笑ったり揶揄したりしてはいけない。校長は感染の疑いを受けて連休休業を8日まで伸ばし、全運動部で連休中以降の大会参加中止も決定し、例え今回は陰性と出ても「今後とも注意」していくと語っている。すべて適切にやられている。しかし学校にとっても生徒にとっても「大変な負荷」なのである。
・ 校長というのは「森羅万象すべてを対象」に仕事をする。生徒、教職員、保護者、教育委員会、地元、同窓会、とにかく「すべて」であり、ここが根本的に「教員と違う」のである。「一切の責任はすべて校長」にある。これは「法律」なのである。 教員には一切の責任などない。ここのところが分からない教員が時にいるが、そういう連中の中に時々「校長の権限を侵害」する者がいる。
・ 「すべての責任は校長」、この認識が強い校長ほど「リーダーシップ」を有しているのである。教員の担ぐ「みこし」に乗っているだけの校長ではこの横浜の校長のように「涙は見せまい」。影に隠れて「うろちょろ」するだけだ。結構このタイプの校長は多いのが現実だ。
・ しかし困ったことになった。今朝の新聞あたりから「新型インフルエンザ」報道も一時期の過熱状態から少し冷静さを見せ始めているとは言え、我々は「門外漢」であり、とにかく「専門家と行政が発する情報」を集めて連休明けにも「判断しなければならない。」
・ 「修学旅行中止や延期」が全国15校というが実際はまだまだ出てくるのではないか。メキシコに行くアホはいないと思うが、感染者のいない国に出かけるのはどのように考えるかだ。 5月12日からオーストラリアに行く予定だった都立橘高校は旅行の中止を発表した。このニュースは私にもショックを与えている。
・今月20日からオーストラリア、イタリア、フランス、オランダに行く予定だったお隣さんの学校、大阪学芸高校は連休明けの11日に決めるという。新聞記事によれば副校長は「今はどうすればいいか分からない」と頭を抱えているという。分かる。分かる。もっと情報が欲しいのだ。
・ 本校は21日から「オーストラリアと国内北海道の2本立て」であるが「ウーン」と頭を抱えている。エアポートは各国を行き来している人たちの「たまり場」であり、言い換えれば「様々な空気の混合場所」である。これほど危険な場所はないとも言えるが、そんなことを言ったらどこにもいけない。難波の心斎橋筋とて同じことだ。
・ それに「オーストラリアには感染者は出ていない」。しかしこれから冬を迎える現地は厳しい状況とも考えられる。それに旅行会社から「キャンセル料」が要求されるのか。延期したら3学期までに新たな計画が組めるのか、この学年は結局修学旅行のない学年で終わって本当に良いのか。
・ 予定通り挙行してもし万が一「感染者」が本校から出たりしたらどうするのか。全員に出発から帰国まで「マスク」をつけさせたりしたら「どこかのオカルト集団」に間違われかねない。肝心の「2年の学年団」がどう考えているのか。
・ とにかく横浜の校長先生ではないが後で泣くようなことは出来ない。せっかく2年も準備して「本校歴史上初めての海外修学旅行」をどうするのか「最終決断のカウントダウン」が始まっている。7日に臨時の校務運営委員会、旅行会社との打ち合わせ、そして臨時の職員会議を翌日に持つことになろう。
・挙行するにしても中止するにしても「臨時の保護者集会」は必要だろう。「今回出す結論はいずれにしても一切の責任は私」にある。しかし厳しい情勢となってきた。アイルランドでも出たらしい。「フェーズ6」になる可能性があるとテレビが報じている。