・ 「甲子園」がポロッと手から逃げて行った。ほぼ掌中にしていたのだが、残念だが逃した。致し方ない。今日は「大阪桐蔭高校との秋季大会の戦い」だった。これに勝ったらほぼ90%近い確率で「春の選抜甲子園」に出場できるかもしれない試合であった。
・ 息詰まる「投手戦」だった。本校エースの近藤は打たれるも連打は許さず、13回を投げきる。守備も鉄壁で「エラー」などない。しかし「打てない」。相手のピッチャーは背番号は13をつけていたが左腕の本格派であった。カーブが素晴らしい。
・ どうも本校の打者は左腕と緩やかなスピードの落差のあるカーブが苦手に見えた。ヒット数は結局6本、相手の桐蔭は14本だ。7回までお互いゼロ。後半は浪速が間違いなく「押して」いた。しかし最後の一本が出ず遂に「ゼロゼロで延長戦」となる。
・ 空は晴天、少し蒸し暑い感じだったが気持ちの良いスタンドである。場所は「舞洲スタジアム」、本当に立派な球場だ。本校専属の写真館の社長の運転する車で11時30分に学校を出る。ところがこの社長、道を間違えて我々が何処にいるか分からなくなる。迷子だ。ナビをつけても駄目なのである。
・本当に気は良い「キャラ」の面白い社長さんだ。でも最近私はこのお人柄を好んでいる。「演歌」が大好きで車の中で謳うのだ。今、杉良太郎の「矢立の杉」というのにはまっておられるという。確かに良い歌だ。CDを貸してくれた。「覚えろ」と言われるのだ。しかし唄いながら道に迷子になったのでは困る。
・ 思い余って、私は車を飛び降り「タクシー」に飛び乗る。試合が始まっている時刻はとうに過ぎている。「焦った」。早く応援してやりたいと。これでこのシーズンは4回目の応援だ。「私が応援に行くと勝つ」と信じている。実際勝ってきたから。
・ タクシーの運転手さんに「急いで」と頼む。心得たもので「へい」という感じだ。プロはプロだなーと思う。ナビなどなくても頭に入っている。ぶっ飛ばして車は球場へ急ぐ。後ろを見るとなんと写真館の社長がぴったりと後を追いかけて来るではないか。運転手さん、後ろの車を巻いてくださいと頼むもしっかりと追いかけてくる。カーチェスである。「面白い光景」であった。到着した時は1回裏の攻撃が終わったところだった。
・ 「延長は13回」まで進む。遂に試合が動いた。2本の連打と相手のミスでなんと「2点先取」だ。浪速は先攻であったからボードには「2対ゼロ」と出る。あの桐蔭のベンチと応援席が静まり返る。まさか今年の夏の全国チャンピオンのあの桐蔭を延長13回で2対ゼロでリードしたのだ。
・ 浪速の応援席の誰もが「勝利を確信」した。私など正直気の早い方だから、「もし甲子園となったら何を準備すればよいのだろう」と本気になって考えた。しかしだ。勝負は本当に最後まで分からない。
・ 13回の裏、桐蔭は3本の長打で簡単に2点を取って同点だ。まさに「あっという間の出来事」で私は呆然とした。勝負の怖さだ。その時点では相手の走者はいない。更なる延長を覚悟した。
・ 「勝負の非情」さだ。そこから桐蔭の地力か。長打が出て結局1点入り「逆転負け」となった。13回裏2対3で逆転負けとなったのである。後ろの応援席の保護者は「泣いている」。本当に泣きたい気持ちだった。
・ 着任2年目で桐蔭を下し一歩春の選抜に近づいたら明日の新聞は大変な記事になっていたと隣のK教諭は残念がる。「浪速、桐蔭の連覇を阻止」「浪速、桐蔭を圧倒、近藤抑える」。全国紙に載るはずだった。しかしすべては消えていった。
・ 試合後選手が泣いているとK教諭。彼らも「一瞬甲子園の夢」を見たのだ。高校野球児にとって「甲子園は特別」。でも良いではないか。一瞬でもその思いが胸に去来しただけでも「良しとせよ」。
・ 全選手と応援の部員すべてを入れて記念写真を社長に頼んで撮って貰った。監督が挨拶にきて「申し訳ありません」、野球部長も「言葉にならない」。しかし私は監督に深々と頭を下げて「有難うございました」とお礼を言った。
・ 野球部員には「この悔しさを忘れるな。しかし良い試合をした。次は夏を狙って頑張れ」と慰労と激励をしたのである。来週月曜日には金一封を出してやって「焼肉」でも腹いっぱい食べさせてやりたいがなんたって部員数が100人を超えている大部隊だ。
・ 以前ブログにも書いたが部活動の応援に行くと「校長冥利」を感じる。そして目標に向かって頑張っている生徒を見ていると「単なる学力だけの教育の限界」を感じる。前の公立学校は名うての進学校であったが「浪速高校で感じる幸せ」はなかった。
・ 世に出て「成功」する人間、「生き抜いていく力」はこのような部活動を通じて得るものは極めて大きい。私は部活動をもっともっと応援してやりたい。明日は文化部「雅楽部」の応援だ。 第22回大阪私立中学校高等学校芸術文化祭典が府立青少年会館である。本校の「雅楽部は校長の特別支援クラブ」だ。昨日も30万円もする小太鼓の購入を手配した。来年の「インターアクトの韓国行きは今のところ雅楽部」を考えている。