・ 昨日からテレビでは「ソニーの赤字転落」を頻繁に報道していたが今朝の朝刊各紙も当然のこととして一面に大きくソニーの不振を掲載している。正直「ソニーよ、お前もか?」という気分になる。「世界のソニー」が大不振だ。
・ 先には「トヨタ自動車の赤字転落」を「これでもか、これでもか」と報じていたが、これで「もう一方の雄であるソニー」までとなると確かに「景気の酷さ」を実感する。日本の超優良企業で世界ブランドの会社を「二つ挙げよ」と言われたらまず誰でも自動車のトヨタと電機のソニーを上げるほど、「この2企業は日本を代表する企業」である。
・ 経済評論家でもないし経済アナリストでもないから専門的な分析はできないが、それでもその昔、「鉄鋼業」に勤めていたときは「為替レート」の動きには習慣的に目がいき、「1円のレートの動きにも敏感」であったものだ。
・ 大体サラリーマンは「日本経済新聞」を「なめるように読む」ようになると「一人前」と言われ私も日経は角から角まで目を通すことはもう「癖」になっていた。日経に加えて大手4紙から1紙読むというのが「毎日のパターン」であった。
・ ところが「企業界から教育界」に転じて8年目ともなると徐々に為替レートなどに「疎遠」になることは分かっているのだが、「感覚が遠のいて」いくのに驚く。毎日生徒と先生と接しているから直接的には為替レートには無関係になってくるのだ。しかし私の気持ちは複雑である。「ノスタルジー」があるのだろう。
・ そうなのである。「学校は為替レートから最も遠い存在」である。「関係ない」と言ったほうが良いかも知れない。このように昔は教育論文など書いたものだった。確かに日常の仕事の中で為替レートの変動は教師の仕事と直接的には関係がない。
・ しかし今日東大阪の中小企業と言えども大手の下請けなり請負で「為替レートと無縁の会社は存在しない」。中国製品と戦っている国産品を作っている会社もある。世界中が貿易という血液循環で結ばれているからアメリカに端を発した「金融危機」が世界の隅々まで「アッ」という間に広がってしまうのが世界の経済なのである。「世界同時不況」が当然起こり得て当然なのである。
・ そのような状況から、先ほど学校は為替レートに無関係と書いたが最近は「その見方は間違っている」と考えるようになった。適切に言えば廻り回って「為替レートは教師や生徒に影響」と言った方が良いかも知れない。自営業、勤労者いずれにしても保護者世帯に為替レートはその「家計を直撃」するのである。従って今回の生徒募集に見られるように不景気になれば「公立回帰」が起こり大学選択も「安・近・少」となるのである。
・ 問題は「教員の意識」であり、「為替レートが自分の給与に直結している」と感じる教員は少ないのではないか。私の経験と観察でそのように思う。「自分には関係ない世界」と感じているならそれは間違っているのである。
・ それでも海外旅行が好きな教員は為替レートについては少しは敏感であるがトヨタやソニーや原材料を輸入している鉄鋼業などは「必殺パンチ」となって襲い掛かってくるのだ。今回の急激な業績悪化は間違いなく「為替レート円高」局面での「ハンマーパンチ」であると私は思う。
・ 特に「電機業界の不振」はこれに間違いない。「派遣切り」は昨年12月初めに東芝とキャノンが九州工場の半導体関連で非正規雇用者の削減に踏み切ったのが序章で、その後直ぐソニーは国内工場を軸に8000人の正社員、同規模の非正規社員の「首切り」をアナウンスした。これは「社会に大きな衝撃を与えた」。
・ 新聞記事をスクラップしているから分かるのだが、その6日後にはシャープが三重工場、天理工場の液晶製造ラインを閉鎖し亀山工場に集約することを決めている。即ち先を争うように日本を代表する大手電気メーカーが「リストラ」を始めているのである。派遣切りは非正規社員の話ではなくて今後「正規社員のリストラ」が本格的に始まると考えて良い。
・ 自動車業界はそれでもまだ世界市場の中で「比較優位」のポジションはキープしているからまだ救える。ただ不景気で車を変える購買力が低下したからだが、今後「小型車」や「ハイブリッドカー」など技術開発力は抜きん出ているから「しばらくの辛抱」で何とか成るかもしれない。
・ 問題は電機業界だ。電機業界はバブル崩壊後の経済立ち直りの過程で「技術流出を避けるためには国内で生産するに限る」と一斉に「舵」を切ったのである。シャープの亀山や堺新工場など見れば分かる。「国内で囲い込み」をしたということである。
・ コストを下げるためには社員を抑え、「徹底的に派遣社員化」を進めたのが現在の実態である。これで「儲けに儲けた」のであるが、円が120円台から80円台になった瞬間に「利益はすべて吹っ飛んだ」のである。
・ 「円安バブル」で稼いでいた「砂上の楼閣の利益」は「円高」に触れた途端、一瞬にして競争力を失ったのである。基本的に輸出産業だからシャープで言えば亀山から世界の各地へ物を運ぶ「輸送コスト」に振り回されているのではないか。ソニーなどは50%が国内生産で輸出比率が80%だからちょっと考えれば分かる話である。
・ そして業績悪化の最初の犠牲者が「派遣社員」である。円高になったのだから「製品価格を値上げします」と言えば「派遣切り」はなかった理屈になるが、そうすれば「国際価格競争力」が中国や韓国に比べて落ちるから当然製品は売れなくなる。
・ 要は「円高の日本国内でモノを作り続けていくため」に何を成すかであるが、今更「中国やインド、ベトナム」に出て行く訳にも行くまい。私の独断と偏見で言えば「給料ダウンの時代」が本格的に始まると言うことである。
・ 非正規社員の首切りが一段落したら次は「正規社員のリストラ」が始まり、それが大きな社会問題となるから「ワークシェア」が本格的に俎上に上る。「給料を下げて皆で仕事を分かち合う」ということではないか。
・ 「製造業の空洞化防止」と言って「派遣業法」まで変えて大手企業に「人切り」を容易にさせる「大企業の品格」まで失わせて国内産業を育成しようとした官民の目論見は見事に崩れ、「路頭に迷い公園で寝泊りする」多くの人を作り出した。その結果「銀行強盗やタクシー強盗」など「社会の不安定」をもたらしたのである。
・ 今共産党の機関紙「赤旗」が売れに売れ、部数を伸ばしていると言う。「蟹工船」が読まれ、私は「不気味な世の中が来る足音」を感じるのだ。「勘が良い」のが取柄だと思っているだけにどうも匂いが違ってきている。本当に「先行きを心配」している。
・ 「産業の米と言われた鉄鋼業」で企業戦士として仕事をし、今学校という塀の中で仕事をしているだけに「世の中の微振動」が余計に感じるのである。言いたいことは学校の教職員は「他人事」と思ってはならないということである。苦難にさらされた府民や保護者から「一体学校の先生は何を考えているのか。高い給料を取って」となってはいけない。
・ 今年は何とか「いけそう」であるが「来年の浪速」など誰も分からない。一挙にして「沈没」などは十分あり得る話だ。私は先を読み、じたばたしないように「先手、先手」でここまでやってきた。
・ 少なくとも今までは教職員が「付いて来てくれた」から「今日の浪速」がある。3年前の「惨劇の状況」を忘れてはならない。「地獄のような状態」から抜け出した。しかし問題は「これから」なのである。
・ 「人間、楽になってきたら昔の苦しい時代のことをすぐ忘れる」。それでは駄目だ。直ぐ元の木阿弥だ。校務運営委員会のメンバーが3人も朝読書で持ち時間を減らせといってきたようにすぐ「気がゆるみ増長」するのだ。私は心配している。本当にお金を貯めて新校舎を建設する気が教職員にあるのかと。「お金は誰も呉れない。自分たちで稼いでいかねばならない」。
・ 「学校長経営者論」がここ8年くらいの教育界のテーゼであった。これからは「教員一人ひとりが経営者」でなければならない。「私学教員の給料は理事長や理事者が出すものではなく、自分たちで稼ぐもの」と考えねばならない。