2009年6月5日金曜日

6月5日(金)生徒の怪我

・ 「生徒が怪我をした」という電話ほど「ドキッ」とするものはない。とにかく本校は生徒の怪我が多い。勿論毎日という訳ではない。それだったら大変だ。数は言うまい。とにかく「私の感覚」では多い。
・ 前の公立高校でも生徒の怪我は多かった。長い間サラリーマン生活をしたが同僚、部下の怪我が日常茶飯事ということはなかった。たまにゴルフで脚を捻挫したとか言うくらいのものであったが、とにかく「高校生の学校における怪我は多い」。
・ 「元気の良い学校で怪我が発生しうる」。これは間違いなさそうである。元気の良い学校とは「クラブ活動の盛んな学校」のことである。特に運動クラブである。浪速も前の学校も本当にクラブは活性化していた。そしてクラブ活動の元気な学校は「進学実績も良好」な学校なのである。「進学校」なのである。断言して良い。
・ 府立高校では毎年学校単位に怪我の発生件数などがデータとして回ってきていたが、北野、天王寺,高津など「トップ校」がずらりと並んでいる。このことは他府県でも同じようなことで灘高校や東大寺学園でも同じ傾向である。それは「部活動が盛ん」だからである。
・ まさに進学校ほど「文武両道」を地で行っている。勉強もするし部活動もするのだ。さすれば部活動をしない学校は、勉強もしないのかと問われそうだが「定性的な傾向」を話しているだけだから「目くじら」を立てる必要はない。
・ 高校の中には放課後生徒は殆んど学校から居なくなり、すぐ「アルバイト先に行く」という話も聞いたことがある。「部活動など有り得ない」というのだ。「放課後学校の電気が消える」。生徒がいないからである。勿論全ての生徒ではあるまいが。とにかく本校は生徒の怪我が多い。勿論自慢できる話ではない。
・ 最近では6月2日のことだった。自宅に居る私の携帯の電話が鳴った。男子バスケット部で練習中に生徒同士が衝突をして右上まぶたを切ったという。今病院に連れて行った。血が流れているという。教頭からの報告であった。
・ このような電話がくると「ヒヤッ」とするのだ。結局この生徒は切創で5針の縫合で眼球には問題なく眼科にも行く必要はないと整形外科の先生に診断され、その後おえに来て呉れたご両親と自宅に帰ったのであるが、大体怪我の程度もこのようなもので今まで大きな事故になるようなことはなかった。
・ 「今日的学校の対応の仕方」は昔と違ってとにかく「安全第一」に事を処理することが求められている。血が流れていてもボクシングみたいに試合続行や練習続行などトンでもない話で、後で「訴訟の対象」にすぐなりうる。
・ 「基本的なマニュアル」はこうだ。まず学校で「応急処置」をして保護者に連絡する。そして怪我の状況説明と応急措置の話をして「病院に連れて行く了解」を求める。場合によっては「指定病院がありますか」とまで聞かねばならない。
・ そしてタクシーを呼んで顧問か担任の先生が同行して病院に行くのだ。医師の診断を伺い、その結果を管理職に電話し、、再度保護者に状況を説明して、納得して頂くことになる。問題なければ親に引渡して教員は学校に戻り「レポート」をまとめるのだ。
・ 以上がマニュアルであるがこれを逸脱しようものなら場合によっては「大きな問題」となる。「学校側の瑕疵責任」となることもある。今回も担当教諭は「パーフェクト」に対応してくれた。その昔、体育の授業中にこれまた生徒同士の空中衝突で怪我が発生し、この時に「生徒を1人保健室まで歩いて行かせたこと」が後で問題となりかかった。
・ 生徒は「大丈夫です。1人で歩いて行けます」というからそのようにしたらしいのだがこれはやはり不味い。結果的には生徒、その保護者と担当教師の「信頼関係」が出来でいたので大きな問題とはならなかったが、我々はこの事案から「多くのことを学んだ」。
・ 万一訴訟になるとこれは大変で、学校の管理職はこの対応に振り回されてもうどうしようもなくなるだろう。それだけに「初期の対応」を間違ってはならないのだ。練習試合とか公式戦とかでも同じことだ。最近大きな事件として報道された事件がある。
・ 「部活動中の落雷」「高槻市協破産賠償」という例の事件だ。サッカー大会中に落雷に遭い、重い障害を負った高知市の当時私立高校生が学校側と協会を訴えた事案で99年高知地裁に提訴した。長い裁判になり結局最高裁まで行って昨年9月に結審したのであるが「逸失利益や介護費用など約3億円の支払い」を命じた事案だ。
・ 主催側の高槻市体育協会は「賠償金」が払えないから資産整理で金額を捻出するはめになったという。厳しい話である。新聞やテレビでも大きく報道された。「訴訟時代」を迎え、学校もそれに備えなければならない時代となったのである。賠償金で企業や学校は簡単に倒産する。
・ 「学校の管理下で起きた災害の補償」は独立行政法人「日本スポーツ振興センター」の「災害共済給付制度」があるが災害補償は最高3770万円と限界がある。だからこのような訴訟になるのだ。
・ 学校は生徒の部活動を禁止することは出来ない。そのような学校には誰も行かないだろう。しかし「一歩間違えば」前述のような訴訟になるのである。事前の準備体操、教師の指導や付き添い、万が一怪我が発生した時の対応など教師が守るべきことは多いが、それをやっていないと大変な事態を招く可能性があるのである。
・ 私はそれを繰り返し教職員には説明してきた。「学校も難しい時代に直面」し、従来考えられないような「事案」が学校を舞台に出てくるようになった。例えば「奈良産業大学野球部の医療費詐取事件」である。これも大きな事件であった。
・ 野球部の監督が鍼灸医院を経営しており「部員に架空の医療行為を行い」、保険金額を詐取したというものであったが、これも高等学校を舞台に発生しないとは言えない。怪我をした生徒の様子を見に来ると言って「トレーニング行為を医療行為」と申請したら我々には分からない。
・ 「世の中が複雑に絡まって」きており明治大正昭和の時代のように学校と言うものが「社会から隔離された世界」ではなくなってきたことが背景にある。代表的なものは「学校の安全管理」「裁判制度」と「医療制度」ではないか。
・ 又今回の「新型インフルエンザ」も新たな課題を我々に突きつけた。「ウイルスの侵入」である。今回のことが事例となって簡単に「休校」ということが行われるようになったら大問題である。
・ 学校と言うのは何時も「ドンと控えている、門戸を開いている」というのが日本の学校のイメージであったが、それがどうも「教育大池田児童殺傷事件」の外部不審者の侵入事件以来、今回のウイルスまで様々な「不審者、危険物が学校に侵入」してきているのである。学校運営も大変な時代になってきた。