2010年4月5日月曜日

4月5日(月)私立高校の辛さ:その4











・ まさか世の中の人々で今度の法案「公立高校授業料無償化」で「今後はただで公立高校に行ける」と思っている人も居ないだろうが、念のため書いておかねばならない。ただで公立高校にいけるわけではない。私学も同じことである。
・ 「学用品や修学旅行の積み立て、部活動」にもお金はかかるし電車やバスで通学するなら「定期券代」も馬鹿にならない。大体全日制の高校生が学校に通うために1年間に必要な平均額を一応は抑えておかねばならない。
・ これには文部科学省の「子どもの学習費調査(平成20年度)」というデータがあってこれによると「学校教育費全体では公立で約357000円」とある。内訳は授業料約117000円、定期代などの通学関係費81000円、入学金、「PTA会費などの学校納付金45000円、図書・学用品・実習材料費38000円、修学旅行・遠足・見学費33000円」となっている。
・ 通学関係費の81000円は高いようにも思えるがこの中には制服やかばんなどの必需品の代金も含まれているという。大阪府が公表している「大学・高校納付金参考例」によると府立高校の「制服代」は約43000円という。それ以外に「体操服代」などもある。
・ 一方「学校教育費の平均額は大体公立高校の2倍以上となる私立では783000円」と3月17日の産経夕刊記事にはある。学校納付金が約216000円、修学旅行・遠足・見学費は54000円にはね上がる。
・ 本校でも今年から実施するが修学旅行で海外に行くのは珍しくなくなったがあくまで年間の額であり3年間とすれば3倍しなければならない。しかし以上はあくまで学校生活に直接かかる直接費であるが「塾や予備校」に通わせれば更にお金がかかる。
・ そうした費用も加えた「20年度の高校生の学習費総額は平均で公立516000円、私立は980000円」という。しかし本校では730000円であるから平均以下ではある。

・ どうしてこのような差異が出来るのかが問題で「公私間の助成の格差」なのである。公立と私立の公費支出の格差は5倍はあるのではないか。「私立高校の収入は保護者からの納付金と府からの私学助成金」だけである。
・ それ以外で言えば収入源は「寄付金」と「事業収入」それに「資金運用に伴う損益」というのがあるが、このご時勢であり、寄付金などほとんどない。又一介の私立高校が余裕資金で「財テク」をして運用で利益を出すなどは考えられない。
・ つい最近、「大学がこの財テクの失敗で大きな損失」を出して社会問題となった。学校法人がリゾート地でホテルを経営したりして上手く行った験しはないのではないか。経営不振に陥った学校はこの種の他の収益事業に手をだしたことが直接的原因となっている。
・ 従って一般的には「私立高校の収入は二つだけ、補助金と納付金だけ」である。この合計数値を学校会計基準では「帰属収入」と表現している。読んで字の如く私学はこの収入に第一義的に「帰属している」のである。
「私立高校はこの帰属収入からすべてを賄っている」のである。何が支出項目であるかは極めて簡単な話で
* 理事者報酬・教職員人件費
* 図書・教育研究費
* エネルギー費(電気代、水道代等)
* 教職員の退職金積み立て、生徒奨学金積み立て、減価償却費
* 設備補修費
* 将来大口投資の積立金等
・ 「最大の支出項目は人件費」でここが大きなポイントである。データはあって東京では帰属収入に対して60%から70%の範囲であるが大阪は少し高くて70%から80%、学校によっては80%以上のところもある。
・ 「 適正規模は60%から70%と一般的には言われており」残った資金でそれ以外を賄うのだから結構厳しいのである。従って私立高校は帰属収入を上げる手段、すなわち「生徒増」を図るか、「人件費の削減」しか生きていく道はないのである。誰が考えても分かる話なのである。
・ 私に言わせれば「私学経営は案外と易しい」と言える。ただ「生徒が来てくれることが大前提」であるが、「生徒が少なくなったらその分教員の数を減らし、一人当たりの給与の削減」である。極めて明瞭な論理展開である。
・ 学校は「公益法人」であるから営利企業ではない。株主に配当する必要もないし、利益を上げて新設備を作る必要はない。ただ一つ、生徒を収容できる教室だけが必要設備なのであるが、これを「自力で積み立てている」のである。
・ 従って私立高校は「基本金」として中長期的な視点に立って将来の必要基金を積み立てておかねばならないのである。それをせずに「すべて教職員の給料に消えてしまっている」としたらそれは明らかな「自殺行為」であり、これを放置する経営側も教職員側も責任がある。
・ だから私は私立高校における教職員に必要なことは「経営という視点」を有することだと言ってるのである。そのためにはまず経営側がすべてを「経営情報を開示して現状と将来の展望の説明責任を果たすことが絶対的に必要なこと」であると言っているのである。
・ 私はこの3年本校でこのことを実践してきた。「その結果が今日の浪速の姿」である。平成26年には新校舎をこの目で見るために管理職も教職員も歯を食いしばって頑張っているのである。
・ 本校の教職員の給与は公立教員に比べて低くはないがほとんど同じであるとデータが示している。教職員の理解と協力を頂いているのである。加えて「この3年間の生徒数の増加」が我々の立てた「新経営計画」というものの実現性を確実なものにしているのである。
・ 我々がそのレール上をしっかりと走っていられるのもこの「新経営計画」があるからである。これほど「ピタッ」と嵌まった経営計画というものが私立学校において実践されている例も多くはあるまい。
・ 夕方ちょっとしたニュースが入って来た。ライバル校いうか何と言うかこれ又大阪の有名な私立である上之宮高校が遂に共学に踏み切ると発表したらしい。あれほど「男子校で頑張る」と言われていた学校であるが生徒数が減少してきて、「止むに止まれぬ方針転換」なのだろう。これも「経営計画の変更?」。
・ 嘘か真か知らないが「何処を競合相手と考えているか」という質問に対して「浪速高校と大阪学芸高校」と答えられたそうだ。しっかりと防御を固めて打って出る。このように結局は「私学間で生徒の奪い合い」になるのである。負ける気はしないが「油断は禁物」である。