2009年10月2日金曜日

10月2日(金)新学習指導要領




・ 全く初めてのことである。事前予告はあったのだが、昨日文部科学省から全教員に新「学習指導要領」が送付されてきた。早速教務部長が全員に配布していた。送り状には「各学校の先生の皆さまへ」として一文がある。
・ その中身は校長宛に「新学習指導要領の趣旨及び内容について理解を深められるよう格段の配慮をお願いします。」とあるから極めて「低姿勢」である。末尾の文章は「このように私たち文部科学省も子ども達の教育が一層充実するよう尽くしてまいりますので先生方におかれましても、引き続き格段のご尽力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。」である。
・ 私はこれらの文章を読んでいささか「苦笑」したのだが、「ハハーン」とすぐに文科省の考えることが理解できた。早速私は校内メールを使って全教員に下記のようなメール文を送信した。
“前略 平成21年3月告示された新学習指導要領は極めて重要なものである。改正教育基本法、改正学校教育法を受けて教員への周知徹底の意味で全国の教員すべてに配布するものであり、我が国としては初めてのことである。各先生はまず指導要領の「総則」と自分の担当教科について頭に入れなければならない。そして「指導計画」が作成されるものである。ポイントは道徳教育他の改定の精神の部分であり、改正教育基本法が傘として被さっている。各教師はこの指導要領を個人もちとして保管管理のこと。又これについては自宅へ持ち帰ることは特別に許可するので、自宅での研究(宅研)資料として扱うことは構わないものとする。
・ 従来学習指導要領は文部省の発行で大体200円程度の有料販売であったが今回初めて「無料で日本全国すべての教員に配布」されたというからその部数たるや相当なものだが文科省としては「趣旨徹底」のために無料配布を決めたものであろう。一般的に教員が本屋さんに行って学習指導要領を買うなどは考えにくい。文科省は分かっているのでる。
・ 送られてきた分厚い本の最初には「改訂教育基本法」が、そしてその次には「学校教育法(抄)」がある。その後「学校教育法施行規則(抄)」があって「学習指導要領」にアレンジするなど経緯を分かりやすくする配慮も一応はなされているが、これだけでは分かり辛いというのが私の意見である。末尾には中学校の記載もある。
・ 確かに従来の市販本はB5版であったが今回はA4版化するなど工夫はしているが「旧来に比べ、何処がどう変わったか」を示すものが親切というものだ。役人の資料というものはこのようにわざと分かりにくくしているように思えてならない。だから私は何時も「他の解説書を購入して勉強」する。
・ 昭和23年3月、戦後の復興を目指し、また新しい教育の確立を願って「教育基本法」が制定された。それから60年近く過ぎ、見直しの機運や日常的な教育に関わる問題が喧伝されるようになって「教育の荒廃」「教育改革」などという言葉が頻繁に登場してくるようになってきた。
・ 平成12年「教育改革国民会議」において議論が始まり、その後議論の場は中央教育審議会に移り、平成15年から具体的な審議が行われ、「ゆとり教育の弊害」「公共道徳の問題」「不登校」「いじめ」など教育問題が社会問題化したのである。
・ そして遂に安倍内閣のとき、平成18年12月の国会で「改定教育基本法」は成立した。改正教育基本法の内容や目指す方向など、例えば大きな話題となった特定の団体や政党が「愛国心は駄目云々」等の論争などあったが、この基本法の改正で大きく学校教育は変わっていくものと思うし、変えていかなければならない。私はこの改正教育基本法を評価している。
・ それを受けて実際に教育現場で教育に当たる教員の「手引き」として今回送られてきた資料が「新学習指導要領」である。旧教育基本法は「理念法」と言え、教育に関する憲法であったが改正教育基本法はかなりかなり様相がことなる。新設された条項や文言から考察すれば「実践法」と考えてよい。単なる理念から具体化を促す方法として「教育振興基本計画の策定」がベースにありその次に学習指導要領がくる。
・ ここで教員が注意しなければならないことは学習指導要領は「法律」であることである。守っても守らなくとも良いというわけには行かない。私はこの「実践法」としての位置づけに注目している。本校教育現場において「観念論」から「実践論」への転換がなされることを期待したい。
・ 大体校長以下教員の得意とするところは教育目標とか教育理念を語るのは一般的に上手い。誰も間違ったことは言ってはいないのだ。特に校長先生といわれる人々の最も得意とする部分は「教育理念」を語ることである。語らせたら素晴らしいが「どうやってそれを実現するの?」「貴方の理念を教員にやらせることは出来るの?」と問われた時に答えが出て来ないときがある。
・ だから文科省は今回の送付文で「校長先生におかれましては格段のご尽力を・・・云々」とわざわざ校長に「チェック」を入れているのである。幾ら指導要領を定めても現場の教員が「無視して勝手気ままな教材」を使って授業などしたら「お仕舞い」で、こういう光景は結構多いのである。
・ 戦時中に日本人は北朝鮮に大変悪いことをしたので日本人拉致は仕方がない面もあるのですなどと子どもに教えかねないのです。 だから文科省は前述のように書いているのである。「教員の好き勝手にさせてはいけませんぞ。」「この指導要領にのっとって指導計画を作らせてね」と言っているのである。私にはそのように見える。
・ 学校教育法には「教育は教員が司る」と明確に書いてある。改定教育基本法を生かすも殺すも教員である。教員は改定の趣旨を踏まえ具体的に「指導計画」を作って教育を行わねばならない。
・ 私は昨日の「職員会議」でこのことを徹底して教員に伝えた。まず送られてきた本の15ページから24ページまでの「総則」が極めて重要である。そして自分の専門教科を読破し頭に入れるように校長として指導した。文科省の送り状にある「校長として各先生が趣旨と理解を深められるような特段の配慮」をしたのである。
・ 「教育課程編成の基本方針」は大きく4つに分類される。まず「学力」「道徳教育」「心身の健康・食育、体力強化」「勤労観、職業観、社会奉仕の精神」である。しかし私は思うのである。
・ 本校は今まで先行して学校改革、教育改革を推し進めてきた。「神道科の教科書」を道徳的視点も入れて再編集し、「奉仕委員会」を作り、「多聞尚学館での学力強化策」を展開し、来年からは「土曜日の授業は完全選択性」として「体育・部活」選択が可能とした。すべてこの時のために「用意万端」宜しく先行実施してきたのである。そして「社会科の教科書を扶桑社」に変えた。
・ 「平成18年12月22日にこの改定教育基本法は法律となって制定」された。実は「この日に私は学校法人理事会で理事長・校長に選出され就任」したのである。私は新しい教育基本法の誕生と共にこの3年間本校において「学校改革」を進めて来たのである。私は「教育法令」を勉強するのが好きであるが、その背景にはこういう偶然性もあるのである。