2009年10月30日金曜日

10月30日(金)教育費と公費




・ 文部科学省の「大学設置・学校法人審議会」は27日来春の開設を目指す「国公立の大学5校と大学院7校の新設」を認めるよう文科省の川端大臣に答申したとこの日の新聞に各紙が扱いは小さいが報じていた。
・ 「 新たな学部の設置」は12校13学部、新学科は大学が4校、短大が1校、通信教育が1校認められ審査継続は11校で12月に再審査となるらしい。私は目を追うようにして「関西大学の認可状況」を見たのであるが高槻キャンパスの「社会安全学部の250人」が認められていたので「ほッ」としたのである。しかしもう一つの「堺キャンパス新学部」は次回の審議会に繰り延べになったのか。
・ この二学部には「パイロット接続指定校」として「生徒や保護者の期待」が大きくとにかく早く文科省は認可して欲しいものである。今回は大阪では関大だけであった。しかしこれらを良く見ると何と定員5名とか10名とかの大学院の研究科新設がある。驚いた。5名ですぞ!院生5名で教授などを揃えたとして経営的にやっていけるのか。
・ 大学の新設は5校と前述したが内3校は「短大から格上げ」でこれを見ても「短大の苦しさ」が見て取れる。しかし私は思うのだ。少子化でもなんでも「大学は増え続けている」のである。しかし「これって本当に驚く!」と思う人はまだこの方面の知識が足りない。
・ 今春「大学進学率が50%」を超えたことが大きな話題になったが4年生大学に限れば日本の大学進学率は必ずしも「世界トップ水準」というわけではないのだ。例えば2007年比較で言えば「日本の大学進学率は46%でOECD27カ国中18位だから平均以下」である。
・ トップはオーストラリアの86%、OECD平均でも56%だから日本の46%は威張れる数値ではないのである。日本は高校卒業後短大や専門学校に進むケースが多くこれらを含めれば76%になるが、やはり大学とは4年生以上を言うのではないか。
・ ところが日本の「高等教育機関の中退率」は著しく低く90%と19カ国中断トツのトップである。OECD平均では69%で最も低いアメリカは47%だから「日本の大学は入りさえすれば卒業できる」という実態を示しているという見方も可能だ。
・ 単位を取れば卒業できるのだから外部が「とやかく」言うわけには行かないが、背景の一つに「大学進学の経費」が影響していると私は考える。9月26日の毎日新聞の「教育の森」にもこの点での言及はなかった。
・ 「大学留年」でもすれば日本では教育費が高く、企業の就職も有利とはならないから「とにかく4年で卒業」しておこうと考えるのはうなずける話である。ただ問題は本当に勉強をして好成績で単位を取ったのであれば良いが、「アルバイト」にばかり精を出してぎりぎりで卒業しているとは言うのは「せつない」気がする。
・ 一言で言えば日本の大学は「余裕がない」ように見える。大学だけではないのだが公立も私立も何か余裕がなく「せかせか」しているように感じるのは私だけなのか。それもこれも私は教育に占める「公費の少なさ」が原因であると思っている。
・ とにかく日本の「GDPに占める教育費支出は06年度で3.3%」である。「OECD平均は4.9%」だから比較可能な28カ国中ワースト2位で大阪府公立中学校の全国学力テストの成績と同じで低すぎる。
・ 大体GDPとは国内総生産であり、国民が稼ぎに稼いだ総合計のお金の中からたった3.3%しか教育に回していないのだからどうしようもない。「ダムや道路も大切」だが「教育は国家百年の大計」なのだから「もう少し教育に回せ」と言いたい。
・ 民主党もこの辺は分かっており、だから先の選挙のマニフェストには「GDP比5%」と高らかに掲げている。特に問題なのは「大学」である。たったの0・5%でOECD平均1%の半分しかない。
・ しかし悲劇は「私費負担の重さ」で公私含めたすべての「教育支出に占める私費負担の割合は33.3%と韓国の41.2%に継いで高い」。これを大学だけに限ればOECD平均の27.4%をはるかに超えて67.8%が私費に占められており、やはり韓国についでワースト2位である。
・ まあ日本の大学は暗黒物語、残酷物語である。重い負担は「家計を直撃」しており、前日のブログにも書いたが家計の33%以上が教育費であるからこれはしんどい。08年度の大学初年度納付金は131万円にもなりローンを組まねば大学にやれないのである。
・ 国立大学の授業料も過去30年で15倍になり国公立も低所得者の受け皿にはならない。これは私立高校にも似たような現象であり今年大阪府で起きた「橋下知事の一方的な助成削減は世の流れに逆行する施策」で公立回帰が始まり私立は「授業料を上げざるを得なかった」のである。
・ 日本私立中高蓮によれば08年度末の「授業料滞納率は2.7%」というから低い数値ではない。家庭の経済が緊迫してきている証拠だが、これでは学校もいずれ経営に打撃を与えるだろう。
・ 前述した民主党の教育マニフェストのGDP5%を達成するには「財源は新たに8兆円」というから今の実態からすれば「天文学的数値」で達成の為には北欧各国のように国民は「税率25%程度の目的税」的なものを考えないと実現できない話である。
・ 「国の形を根本から変える覚悟」が政府にも国民にも無ければ出来る話ではない。「やれ道路だ、ダムだ」などとローカルなことばかり言っていては既存の積み上げの上に若干部分を入れ替えるやり方では何時まで経っても無理だろう。
・ 今の民主党を見ていると駄目だ。がん病巣部は温存して塗り薬や貼り薬で「見た目を良くしよう」と言うばかりで本質的なものへの迫りがない。ただ「高校授業料の無償化は大ヒット」だと私は思う。
・ それは「無償化」だからである。有償に対して助成の最大限が無償であるが有償と無償は「概念」が全く異なる。「高校も義務教育化」したと考えても良い。次は大学である。大学こそ「知的創造立国」の為には必要な公的装置である。日本の大学をもっと楽にして余裕を与えていかねばならない。そうすることで「大学の質」を高めていかねばならない。「国の行く末はやはり大学」が担っているのだ。