2009年10月19日月曜日

10月19日(月)大阪府私立学校緊急支援策







・ 今朝の朝日新聞の1面トップ記事は「定時制志向不合格1174人」の「大見出し」である。「不況影響今年度も高水準」「定員超過理由1.5倍」とある。これだけでは何のことか良く分からないが、要は「高校に行きたくとも行けない弾き飛ばされた数が1174名」だということである。
・ 「不況の影響」で「公立志向」が強まり、大体「原則入学」の定時制でも定員オーバーの志願者が居てその結果修学できない層が増え始めていると言う「今までなかった現象」が全国的に見え始めているということである。
・ 不合格者数は「都市圏で目立っており」愛知、福岡、京都などである。北海道や山形熊本などはゼロだったとある。大阪府でも2次募集で167名も不合格が出て4月以降に2次募集をかけ、それでも定員超過で29名が入学できなかった。
・ 「文部科学省の学校基本調査」によれば公私あわせた定時制の今年度入学者数は37083人で「過去10年で最高」となり、逆に全日制入学者数は1093027名で「過去最低」となっている。
・ 間違いなく経済的事情や規則が緩い定時制の利点が再評価と言うか、選択せざるを得ない「新たな状況の出現」と見て良いだろう。又「新たな流れ」として全日制を不合格になった生徒が学費の高い私学を敬遠して「定時制に流れ込む傾向も顕著」で従来の「がらがら」の定時制が「定員オーバー」となっている現象となっているのだ。
・ 朝日はこの記事に力を入れて3面にも4段で大きな記事にしている。こちらは「定時制で学ぶ生徒の実態」と弾かれた子ども達の現実、すなわち、「無就労」などを特集的に書いているのだが全日制と合せて「定時制の定員枠を再検討せよ」との論調であった。

・ しかし街を歩いていても不況の影響を「ひしひし」と感じる。今まで勤労者として40年間、生きてきて、今までも「不況」という感じは何回もあったが、今回は「どうも感じが違う」のである。まだ「二番底」があるかもしれない。『じわじわ』とまだ沈んでいる感じがしてならない。
・ タクシーの運転手さんから伺う話が最も『景気感』に直結していると私はかねてから思っているのだが最近の運転手さんは「言葉もない」と言われている。タクシー運転手では食べていけないから転職せざるを得ない運転手も多くなったという。
・ リストラされたサラリーマンが手っ取り早く稼げる職業としてタクシー運転手になるが「タクシーそのものの供給過剰」と「500円タクシー」の登場、更に「改正労働基準法の厳格適用」で「ニッチもサッチ」も行かないのだという。
・ それらに比べて学校の教職員は恵まれており、本校も例外ではない。確かに授業料の滞納など本当に少ないのであるが実際のご家庭ではご苦労が多いと思うと「謙虚」にしていかねばならないと思うのである。
・ 元気のある学校だけに世の不況感と隔絶したところで「働らかさせて貰っている幸せ」を教職員には感じて貰いたいと思っている。それだからこそ「謙虚」と言っている。「偉そうにするな」ってことだ。
・ 浪速高校は恵まれているのである。それだけに良い仕事をしなければならない。大学からの進学情報の放置など絶対にあってはならないことだ。今こそ「額に汗して」働いて欲しい。給料は高く身分が保証されている職場など世の中の比率は極めて少なく、その中に間違いなく学校の教職員は入っている。

・ そういった環境の中で大阪府私学・大学課は頑張って頂き、「高校生修学支援基金」なるものを「今年度限り」ではあるが実施して頂けることとなった。素晴らしいことである。
・ 今連立政府の亀井金融相が「中小企業へのモラトリアム法案」について議論を巻き起こしているが、今回の私学課の政策は言ってみれば返済猶予ではないから「私立高校生を抱える家庭へのモラトリアム法案以上のもの」である。
・ 「経済的理由から高校就学を断念」することのないように「家計急変世帯」の私立高校の授業料を「緊急支援」するというもので、これは「徳政令」である。背景にはこの春の一方的な私学助成の削減があり、公立に多くの生徒が回帰した現象も一役買っていると考えたほうが自然である。
・ 又大阪府の「公私間の授業料水準の開き」を私学課の優秀な人たちは橋下知事に粘り強くご説明したに違いない。「授業料の差は公立14.4万円、私立平均56.6万円」、「非課税世帯では公立ゼロ円すなわち全額免除で、私学は約32万円」「生活保護世帯では公立はゼロで、私立は7万円」と大きな差違となっている。
・ この現状から知事の言うように私立を止めて公立で受け入れるとしたら定員枠はどうするのか、教職員はどうするのか等考えれば闇雲に公立回帰は総体として「経済合理性に反する結果」となりかねない。
・ 今回私学課は「私立高校の修学セーフティネット機能の強化」を考えてくれた結果がこの「基金」であろう。うたい文句は「家計急変の非課税世帯の授業料を公立並みのゼロに!」ということである。
・ シミレーションに寄れば府内で20年度実績から推定して9600人の20%として「1900人が対象」と踏んでいるみたいである。もともと財政課の内示段階ではゼロ査定であったが復活折衝で国の「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」の活用を入れて10億円のファンドを組んだと見えるが、まあないよりは良い。
・ 私は事務長に指示した。本校の「該当者の徹底したチェック」と事務手続きを抜かりなく進めるように言ったのである。府内の全私立高校生の2%程度だから本校の場合1500人の高校生で内30人程度は出てくるかもしれない。もし無いようであれば本校の生徒のご家庭ではこの基準にのる『家計急変世帯』は居ないことになるだろう。
・ 「来年度から高校授業料の無償化」が始まる。これにあわせて大阪府も新たな施策を出されると思うが私は「公立高校4年間、私立高校3年間の校長経験」で言わせて貰えば「決して私立に学ぶ生徒のご家庭がお金持ちばかりではない」ということである。
・ どうしても「公立には行きたくない、行けない」という生徒は多く、その理由もここでは書けないくらいに広範囲で深いものがあるのである。本校は単に進学実績だけを誇る学校にするつもりはない。
・ しっかりと「建学の精神」を体して「大阪の公立中学校の生徒を受け入れている」のであって少なくとも知事の言われるようなカルテルで受け入れているのではない。「生徒の集まらない私立学校は自然と淘汰されるだけの話」なのである。