2010年8月23日月曜日

8月23日 遍路行 十六日目 女遍路と歩く

十六日目 8月23日(水)   女遍路と歩く


 今日の目標は37番岩本寺までの中間点まで近づくことだ。とにかく歩くだけの日となった。行き過ぎても宿はなく、明日の事も考えながら今日泊まる所まで歩くだけである。今日以降そのような日が足摺岬まで続く。朝、旅館のフロントで或る女遍路に同行を求められる。女性遍路とは言わない。女歩き遍路だ。僕とホテルの支配人とのやりとりを聞いていたらしい。初めての「女歩き遍路」との同行三人である。


① 6時起床、朝風呂を愉しむ一般の民宿では朝風呂を使えないが大きなホテルや旅館では可能であり、これが嬉しい限りだ。明け方部屋に差し込む日の出の光は何か神々しかった。6時30分朝食、魚の干物が旨い。支払い、予想通りいささか高く、9765円。フロントで今日のコースを再確認した。あくまで三陽荘はやって来た道に戻り、国道沿いを歩けと言う。危険が過ぎるというのだ。しかし来た道に戻るのは気がどうしても進まない。やりとりをしていたが、これらを聞いていたある女性が「今日、一緒に歩かせて頂けませんか」と、やはり来た道に戻りたくないないらしい。危険を分散させたいために僕に同行させて欲しいと申し出て来たのである。



② 前に進むコースを選択し、7時15分出発。男、女のペアー歩きである。初めての経験であった。年格好から言えば間違いなく夫婦か親しいカップルに見えることは間違いない。女、年の頃、50から55歳、夫はいる。長野県長野市、かねてより計画通り今年退職。今の時期に四国を廻りたいと。子どもはいない。歩く姿形は完全であり、装備に不足はない。要は隙はまったくないのである。


③ この女性、健脚であった。決して僕にひけはとらない。細かいピッチで良く歩く。歩くことが好きだとのこと。来年ご主人が定年らしい。今のうちに四国を歩きたい。主人は歩くのは苦手だという。女性としての身体的特徴は余りなく、色は浅黒く所謂美形ではないが、言葉はきれいで知的な感じは受けた。遍路計画書はエクセルで自分で作成したらしいが、何時も取り出しては見ていた。一生懸命働いて来たからか、宿も良いところに泊まり、飲み物もどんどん買う。僕と並んで良く歩く。ただそれだけであった。名前も聞かず、住所も聞かず、今宵の宿も別々、さっぱりとした1日であったが、初めて女遍路と一緒に一日を歩いたのである。特段、これ以上記録に残る会話もなかった。


④ 明徳義塾中高等学校の側を通り過ぎ、太平洋の景観を左に観ながら、うねり、蛇行する元スカイラインの道を歩く。ホテルが言うほど酷い道では無い。確かにコンビニも自販機もないが決して悪い道ではない。途中「武市半平太像」の前を過ぎる。ここで分かった。室戸岬には中岡慎太郎、桂浜には坂本龍馬、浦の内には武市瑞山と高知県も考えているのだ。これなら足摺岬にも何かあるぞと予感したのである。




⑤ 20キロ歩き、須崎市に入る。小さな町であるがかつおで有名な「大間」の町を抱える。僕はビジネスホテル「マルトミ」、彼女は民宿「岬荘」。ここでお別れした。明日、彼女は早い出発とのこと。僕はゆっくりと歩く。気を使わないで済む人だった。僕のデジカメで一枚写真を撮ってくれた。彼女は、写真は風景だけとしているとのことで僕の方からも差し出がましいことは控えたのである。



 ⑥ 明日はどうしたって「岩本寺」までで終わり、3時頃までに入れば良いのだから焦る必要なし。僕が投宿したホテルはホテルと言っても工事現場に長期出張している人たちが使うホテルで食事もついてはない。しかし幸いな事に近くにスーパーがあり、そこで冷えたビールやお惣菜をゲットできた。狭いがよく冷えた部屋でコインを入れたテレビを見ながら出来合いの食事を済ませたのである。これはこれで好きなものが食べれて偶には良いと感じた