2008年8月21日木曜日

8月21日(木)学校徴収金と監査

・ 今朝の毎日新聞が記事にしているが、堺市の小中学校で生徒からの「徴収金」を流用している学校が30校以上あったというもので、備品や教員私物に流用しているというもの。要は「目的外使用」であり、条例違反容疑で堺市教委が調査に乗り出したというのだ。
・ 一言で言えば「不適切支出」というものだが、これは中々微妙で難しい。本校でもそうだが一般的に学校では保護者から集めた「学校徴収金」というものがあり、これでテスト代や教材費、学習活動費、消耗品、昨日のブログに書いた芸術鑑賞費など「生徒個人」還元できるものが使途の範囲だ。例外なく全生徒から徴収されるもので一部の生徒からではない。
・ 今回問題にされたものは運動会で使うCDデッキ購入、グラウンドの砂が少なくなったので入れた土代、球が飛んで来て危ないからといって設置した防球ネット、次のものは笑ってしまうが生徒の茶髪を黒く染める染料、授業で使うインスタントカメラとプリント代などが指摘されている。
・ 又これは些か問題と感じるのだが公立高校の合格発表を見に行った教諭の交通費や教諭個人の名詞ファイル代400円などがある。元来はこれらの備品は公費として支給される「需用費」から支出されるべきものだがこれが1学級あたり年間20万円と少ないものだから「学校徴収金」に手が出たのだろうと思う。大きく考えれば生徒への還元であることは間違いないが・・。
・ しかしグラウンドの一部が凹んでおり、そこに砂を補充し、生徒が怪我などしないようにするために支出したのまで咎められたら「お金のない校長」はしんどいだろう。生徒の通る通路に野球のボールが飛んでくるから防御のネットを張ったのも「生徒の為」とはならないかと歎き節が聞こえそうだが、やはり公立学校は許されないのである。
・ それは支出先が規定されている条例があり、「コンプライアンスの精神」からは逸脱しているからである。今回は領収書や出納簿の作成もしていなかった学校があると記事にはあるが、これは言語道断である。
・ 教諭個人のパソコンの記憶媒体や名詞ファイル代などはおそらく学年主任か分掌部長などが生徒情報を管理するのに必要だったものだろうし、対外的交渉事の多い進路指導部長が相手先の名詞管理のために名詞ファイルを必要としたものだろうが、これを教諭個人の為とすると難しいところだ。
・ 私学においては「学校徴収金」と「法人会計」が峻別できているからわかり易い。法人会計を通じて支出すれば良いわけで「学校徴収金」はあくまで「生徒個人に還元できるもの」として厳密に管理している。しかし境目が明瞭であって明瞭でない時もあり、問題は防球ネットなどの「不特定の生徒」への影響がある場合も学校徴収金で対応して問題かどうかは微妙なところだ。
・ そういうケースの時に実は良い方法があり、「不特定の保護者からの篤志による教育後援会ファンド」である。これが大いに役に立つのだ。不特定の保護者からの寄付金を不特定の生徒に還元する形である。これであれば問題はなかろう。校長の依頼で教育後援会長が支出を決定するもので、学校は直接的に関与しない。本校は今年「高等学校教育後援会」を組織してもらって入学時の有志の保護者からの寄付金、と浪速祭でのバザーからの繰入金などが財源で校長としては「大いに助かり、気が強く持てる」ところまで来ている。
・ それ以外の財源ソースは大阪府神社庁へ支援を頼みに行くか、同窓会への支援依頼と方法はある。公立学校勤務の時代はすべては「教育委員会が取り仕切り」、学校長は「与えられた予算の範囲内で業務を執行」することが仕事であったが、これでは進学意識の高揚に例えば「有力な塾関係」を呼んで話しをしてもらうことさえ出来ず、ほとほと困った私は「教育後援会」をPTAに組織してもらって補習補講や特別講習に対応師してくれた教師に「資料代」としてコストを還元できたものだった。公立の小学校中学校の管理職ももう少し「知恵」を出せばなんとかなると思うがなー。
・ 今後学校経営は「ますます厳しくなる」それは国庫の負担金が削られ、地方自治体も財政余裕がないからである。教職員の人件費が削られ、備品購入費用もないとなると「本当に厳しい事態」が予想される。しかるに必要とする経費は増大する一方だ。
・ O157対策で衛生状態は最高レベルに保ち、外部からの侵入者対策で各門には門衛を配備し、教職員には個人パソコンを持たせ、熱中症対策を取り、とにかく新たな費用発生項目が増えるばかりである。一つ新しいことが増えれば一つ古いものが減るのであれば良いがそうならないところに難しさがある。学校長のやりくりは本当にしんどい時代になってきた。
・ 公立学校は上記のように不適切支出など教育委員会の査察などで明らかになるが、一体私学は大丈夫かという声が出るのは当然で、その対応として実は「監事」による「監査」というのが厳しく「私立学校法」で規定されている。
・ 監事とは学校法人の財産の状況や業務を監査する機関であり、役員の立場で2名以上、理事長が「評議員会」の同意を得て選任し、本校では2名の監事を有する。厳正公平中立の立場から監事は評議員、理事、学校の教職員との兼職は禁止されており「極めて重要な職位」である。
・ しかし言ってみれば監事も私立学校法の枠内での内部監査に近く、「公的補助金」を受けている場合はそう簡単な話しではなく、根拠となる法令は「私立学校振興助成法」がある。この場合は「公認会計士」の監査を必要とする。さほど学校会計基準は厳しい運用がなされており、近隣の学校であったような「不適切な会計処理」をしたりすると公金横領的に厳しくその責めが問われるのである。
・ 本校を含めて殆どの私立大学、私立学校が「私学助成」を受けているから「適切な業務執行」が経営側に要求されており、まず内部監査的な監事監査と公的監査である公認会計士監査のダブルでインスペクトされており、「私学は公立に比べてより厳しい目で見られている」のである。教育委員会がないからである。
・ 本日はそういう意味で本年度2回目の監事監査の日である。今日はメインを会計監査として「固定資産管理」をお願いしており台帳と現物管理を監査して頂く。その後「人材育成・評価システムの実施状況」と「校内セクハラ対策委員会」ならびに「学校広報情報委員会」の活動状況について「業務監査」を受ける緊張の一日なのである。