2008年11月8日土曜日

11月8日(土)それでも教師のプロですか

・ 「校長先生に厳しい“喝”」「それでも教育のプロですか」「そろそろプロになって」「陰山氏、校長らを挑発」とある。面白い。挑発の見出しは朝日新聞だ。1昨日「小中学校長950人」が集められ新しい3人の教育委員が「研修会」で講演した記事である。
・ 橋下知事は府教委に大いに不満があり、自らの強い意思で教育委員を入れ替え、先の全国学力調査結果の悲惨な状況に危機感をもって「くそ教育委員会」などと吼えまくり、「大阪教育日本一」を目指して具体化の第一歩がこの研修会だろう。
・ メンバーは「百マス計算の陰山先生、プリント教育の小河先生、それに夜スペの藤原先生」だ。この講演会に先立って立命館小学校の副校長の陰山氏は前日の5日に朝日のインタビューを受けている。
・ その記事の見出しは「教師に改革迫る鬼になる」「学力調査、同じ結果出さぬ」とあるから単独インタビューでは朝日も皮肉っぽい記事にしないみたいだ。この席で陰山氏は「過去の実績から見ればテストの点を上げることは半年で出来る」と述べている。
・ 以下「教師の意識の変わったところでは成績も劇的に変わる。6日に全校長1000人を集めて説明する。そこが正念場だ。校長が何処まで本気になれるか。それが全てを決する。努力はしましたという言い訳は認めない。努力が評価されるのはアマチュア。教師はプロだ。私は目覚めた教師の力を信じている。その自覚を促すために”鬼“になる。」
・ 更に陰山先生は続けていう。「・・・そのために国民は高い給与と職の安定を与えている。現場にはその自覚が足りない。調査結果の開示が過度の競争や序列化につながると言う具体的な事実はない。起こるのは点の改ざんなど教師の不正だ。各校が成績を上げれば序列は崩れる」。
・ 言いも言ったり陰山先生、力が入っている。そして昨日の研修会だ。講演で陰山氏、中学校の地理で教えているヨーロッパの国の数を質問したところ大半の参加者が間違えると「だからダメなんです。プロたる教師がそんなことを知らずして世の中がまともに動く筈がない」とまで言われたとある。
・ 恥ずかしながら私もヨーロッパの国の数は知らない。最も私は地理の先生でもないし、教師のプロとも思っていないからなんとも無いが。でも陰山先生、算数の先生だったでしょう?
・ 新聞記事で面白いのは研修会後の質疑の時間だ。相当な時間を計画したらしいが参加者からは「質問ゼロ」だった。終了後藤原氏は「先生が分かっていることを言葉にしたので納得したから質問はでなかった」といい、陰山氏は「厳しく言ったので戸惑いがあったのでは」と述べたという。
・ しかし教員というのは自分が教えるプロだと思い込んでいる人種でその人々に「貴方はプロですか」「ボツボツ、プロになりましょう」などと言ったら、気位の高い校長先生だから「ドン引き」するわなー。だから質問が一つも出なかったのは「当然の成り行き」であると私は想像する。
・ 帰り際にある小学校の校長は「陰山委員の主張は確かに正論と思うが厳しい言い方がまるで知事のようだった」と話している。私は笑ってしまった。
・ 遂に大阪府が動き出した。しかしここまでは誰でも持って来れる。「問題はここから」である。陰山氏が言っているように「校長がその気になるかどうか」だがそこが最も難しいのである。1000人の校長を集めて「それでも貴方がたはプロか」と叫んでも半数以上はいや殆どが「フーン」という感覚だと思っていた方が良い。そこが私の見方だ。
・ プライドだけがエネルギーの元である校長先生で、学校と言うのは企業などと違い「校長が変わればやり方が変わる」。あえて前任者と違うことをしないと存在感が無いみたいにやり方を変えるのだ。それが「校長の習性」である。
・ ある人はこのことを評して「のこぎり刃」と表現した。いっちゃーもどり、いっちゃーもどりする、のこぎりの刃だというのである。上手いことを言う。だから学校には「蓄積」と言うものが全く無い。生徒も3年でリセットされ毎年毎年生徒は変わって登場してくる。
・ 「変わらないのは教師の面だけで年だけ食っていくのが教師の生態」である。だから新しいことなど出来る筈もないしする気も起きない。やろうと決心しても「はい、貴方は転勤です」と市内中心部から僻地の荒れた学校に、次は荒れた学校からようやく落ち着いた学校に転勤できることをただひたすら夢見ている教師に「やれといっても土台無理な話」であるという声もある。
・ おまけに学校は「特定のグループが跋扈」し、突出したことをやろうものなら「徹底的に叩かれる」から誰もする気など起きない。校長も教頭もただひたすら60才までの大体平均6年間の残りをしんどい学校で3年、比較的良い学校で3年我慢すれば「見事に勤め上げた」となって「次の仕事を準備」してもらえるから、ただひたすら「問題なく」無難に過ごそうとする。
・ 教育委員会の気を損なうことなく、保護者ともトラブルことなく、特に組合とは「持ちつ、持たれつ」の関係を維持し、中でも「議員バッチ組」とは決して悪いように思われないことが何はさておき重要なことで、こういう悲しいさだめにある校長先生に生徒の学力のことを言っても無駄ではないかと言う声が何処かから聞こえる。
・ 今の校長からマニフェストを取り期限を決めて「契約」し、学校改革に当たらせ、予算もつける。出来ない校長は更迭か引退させる。また知事がどこかで言っているように「30台40台の教頭経験のない教員を抜擢する」「卓越した民間人に任せる」などのドラスティックな改革が必要ではないか。
・ 今大阪の小学校中学校の校長先生が定年を待たずに早期退職し「校長のなり手がいない」ので教育委員会はその手配に苦労していると言う。これなど教員に「人事評価の結果さえ告げるのがしんどいから」という理由だと言う人も多い。
・ こういう教師一筋の仲間意識だけが強くて、優しい人ばかりに平均の何倍もする卓越した能力をお持ちの陰山先生や藤原先生のような手腕が発揮できると思ったら「出発点から失敗する」のではないか。「如何に校長先生にやってもらうか」、一回くらいの研修会で済むはずはなかろうに。