2009年4月2日木曜日

4月2日(木)父子家庭と母子家庭

・ 昨日は4月1日、希望に燃えて多くの若者が社会に巣立っていった。本校でも新人を迎えた。「大学の入学式」もあった。新聞では「親の同伴」が目立ったとある。「子離れ出来ない親、親離れ出来ない子どもたち」と言うのは簡単だが、そういう見方だけでは表層過ぎないか。
・ このような光景を見ると本当に戦後生まれの僕には「時代の変わり目」を感じる。さすがに入社式に付いて行った親は居ないみたいだったがその内に出てくるかも知れない。少子化で今や唯一の「団結の単位」は「家庭、家族だけ」なのだろう。
・ 子どもを育て、大学に合格させ「勝ち組の喜び」にデジカメを持って大学の正門で写真を取るお母さんの気持ちが分かるから「優しい子ども」は「恥ずかしいから付いて来なくて良いよ」とは言えないのだ。
・ 本校でも経済情勢から浪速中学卒業の後公立の高校に進学していった生徒もいる。おかげさまで本校は「授業料の滞納者はゼロ」であるが母親一人で頑張っておられる家庭、父親一人で頑張っておられる家庭など様々だ。
・ お父さんだけが働きお母さんはじっと家にいるという形は「日本の原型」であったが、最早そういう時代ではない。お母さんも外で働いているという比率は相当高い。基本的にお母さんは自分の化粧品を購入する目的ではなくて「子どもの教育費」のためだろう。
・ 少し古くなるが3月18日の日経夕刊に「父子家庭も経済的苦境に」「思うように働けない」との見出し記事があった。母子家庭ではない父子家庭である。男手一つで子どもを育てる父子家庭は「育児のため」に転職による収入減や景気の後退で生活に苦しむ家庭が増えているという。
・ しかし問題は「母子家庭」に比べて限定的であり、支援制度を求める動きも起きているらしい。「どうして同じひとり親なのに、こんなに違いがあるの?」と三重県の男性が行政の窓口に経済支援の相談に言ったら「そんなものはない」と一刀両断だったらしい。
・ 05年度調査と言うから些か古いが全国の父子家庭は約92000世帯で00年に比べ約5000世帯増えている。母子家庭が749000世帯だから1/8だ。国の経済支援も母子家庭だったら「児童扶養手当」は年収に応じて月額最大4万円支給されるが父子家庭だと年収に関わらず受けられないという。
・ また無利子や低利子で修学資金などを融資する「母子福祉資金貸付金」なども対象外であるとのこと。厚生労働省は「父子家庭は母子家庭よりも収入が多い」と説明している。
・ 06年度の全国母子世帯等調査によれば父子家庭の平均年収は421万円で母子家庭の213万円の約2倍と記事にはある。ただ300万円未満も37.2%に上っており、「父子家庭で今困っていること」の調査によれば「家計」が40%で2位の「家事」27%を大きく超える。
・ 要はお父さん家庭も家事などが問題ではなくて家計だというのである。非正規として働く「シングルファーザー」も目立つようになっており、父子家庭の生活困窮は進んでいるのである。このような記事は目にして現実を知る。今まで頭の中に「父子家庭問題」などなかっただけにこの記事は新鮮であった。
・ そして翌3月19日の大阪日日だ。「母子家庭、厳しい就労環境」「偏見根強く孤立化も」との記事にあう。こちらの統計は全国母子家庭が123万所帯(2003年)で母子家庭になった時の親の年令は32歳と言う。
・ 32歳なら「働けるでしょう」と言われ、理解が得られないとの不満もあるし、「女性の賃金は男性の約半分程度」とある。加えて「母子家庭は近隣の噂や就職で差別や偏見の被害」を受けていると団体の事務局長は憤っている。この局長自身非婚で出産し、この時の差別苦難で現在戦っているという。
・ 母子家庭の母親の就業率は85%と高いが、非就労者の85%の人も就職したいと思っているが育児や家事で働けないと記事にはある。従って全国的に「生活保護費」が「うなぎ登り」で大変なことになっているのである。
・ 中でも「全国最多の大阪市」で生活保護費が増加の一途を辿っているらしい。2月19日に発表された大阪市の2009年度予算案で生活保護費は前年度比2.7%増の2442億円で市税収入の約4割と言う。「税収の4割が生活保護世帯」に回されているのだ。
・ 平松市長は「制度を根本から見直して貰いたい」と強い口調で言っておられるがどうにもならないだろう。批判の背景には1990年には市内で32000世帯であった生活保護世帯が今や90000世帯を突破するまでに増え、市財政を圧迫しているからだ。
・ 景気後退が明確になった昨年12月には保護申請件数が前年同月の30%増で1707件に達しており増加傾向は更に強まる勢いと言う。市はこのまま受給者が増え続ければ最後のセイフティネットも崩壊と危機感を強めているという。
・ 以上のように書けばもう世の中「貧困だらけ」と言う感じになる。特に大阪府大阪市は日本の中で群を抜いて「生活保護世帯」が多く、「ホームレス数」が断トツに多く「貧困の塊」みたいに感じるが、こう書けば私には少し違和感が残る。
・ 確かに貧困は悲劇であり、日本でも「ワーキングプア」「派遣きり」など大きな社会問題となっているが、作家の曽野綾子さんは「日本で貧困など有り得ない」と言われている。3月11日の日経夕刊記事である。
・ 「世界に目を向け、甘え捨てよ」ともある。曽野さんの貧困の定義は「その日、食べるものがない状態」とされている。日本には世界レベルでいうところの貧困などないときっぱりと書いておられるのだ。
・ コンビニに食品が溢れ生活保護が受けられれば職が見つかれば食べられる。そして次の言葉に私は動かされる。地球上には解決不能な貧困と飢餓を抱えた地域が山とある。それに比べて「日本の貧困は解決可能」である。世界の貧しい人々が受け入れている「現世の理」には学ぶべきものがあると曽野先生は説いておられるのだ。
・ 現世の理(ことわり)とはお金がなければ道路は舗装しなくとも良いではないか。住む家があるなら今新築しなくてもよいではないか。「出来る時に出来るだけ」だという。理想ばかり先にたてかなえられないと不満を募らせる日本人よりはインドやアフリカ、南米など「貧しい人たちの生き方に学ぶべきものがある」といわれる。
・ 一部「上場企業の管理職よりも高い給料が教員の給料」である。父子家庭、母子家庭を見よ。こういう家庭からも「高い授業料」を頂いて本校は生徒を受け入れているのだ。 「私学の教職員の給料は保護者から頂いている」ことを忘れてはならない。様々な保護者、ご家庭から授業料の中から我々は給料を得て生活している。そのお返しは「良い教育」を展開することに尽きる。保護者の期待もそこだ。保護者や府民が教員の給料が高いと憤っているわけではない。
・しかし私は教員の給料はまだまだ高いと思っている。ただ今のところこれ以上削減を求めたりはしない。大手の企業が定期昇給をストップするなど実質的に「賃下げ」している中で私は「21年度の定期昇給を実施」することを決めた。
・ 4月以降、今年も「全員が賃上げ」だ。「公立学校、他の私立学校を横睨みしながらの判断」であり、「良い人材確保のために必要」と思っている。本校の教職員のみ「辛い思い」をさせるわけにはいかないからだ。しかし他の私学さんの中には生徒減という「塗炭の苦しみ」の中で教職員の給料が信じられないくらい削減された話に暇は無い。