2009年4月24日金曜日

4月24日(金)その1:パワーハラスメント

・ 今日のブログは一昨日の「日本的経営の幻想」に関連している。即ち「終身雇用と年功序列賃金体系は作り話」というテーマで論考したものであったが、今日はさらに1歩突き進んで「世相」を切ってみたい。
・ 卓越した経営者として一世を風靡した「元GE社のCEO(チーフ・エグゼブティブ・オフィサー)のジャック・ウェルチ氏の言葉」に以下のような有名な言がある。「暇になると自分は従業員をクビにする」というものである。
・ その理由は「緊張するから」という。誰をクビにするか、そんなことを考えると自分も緊張するし、クビにならないように緊張する。生き残った社員はありがたみを感じて一生懸命仕事をするというのだ。
・ 実際GEは毎年15%ずつ首にしていたという。プレジデント5月4日号の大前研一氏の「その手があったか」の記事にある。副題として「誰も豊かになれない日本の非常識」とある。特集記事の主題は「給料の格差」である。
・ しかし「恐ろしい表現」であるが、大変良く分かる。「さすがアメリカ」とも言えるが誰彼クビにするのではなくて「全体の中で相対的」に「勤務成績の悪いもの」「能力の無いもの」「向上心のないもの」「失敗の責任」など「それなりの理由がある人をクビにする」のである。
・ アメリカ的市場主義は経営効率最優先・最大狙いであり、「人的投資に極めて敏感」だからこのような発想がまかり通り、アメリカ社会では大きな問題とはならない。逆に彼らの論理は「何時までもこの会社に居ても貴方の将来はないからどこか別のところで再スタートを切った方が良いですよ」という論理なのである。実際GE社などはその世界では有名な「社内教育を徹底して実行している会社」なのである。
・ 私も行ったことがあるがニューヨークのクロントンビルにある企業内ビジネススクールの素晴らしさはつとに有名で日本からも社内教育担当者の訪問があとを絶たないのである。GEやIBMの社員教育はとにかく有名である。
・ これには噂話があって、GEをクビになってくる人間を狙ってGEの周りには「リクルート会社」のリムジンがグルグル回っているという。それくらい優秀な人材がGEには多く、クビになっても「すぐ仕事にありつけるすごい人材ばかり」と言う訳だ。
・ しかしそれにしてもジャック・ウェルチの「暇になれば自分は従業員をクビにする」とはすごい言い方だ。日本では余程注意しないとこうはいかない。そこで4月14日日経夕刊、「急増、解雇パワハラ」の大見出しで「まだいたの?」「社員証回収・・・」の中見出しの記事に話しは飛ぶ。
・ 職場での地位、権限を背景にして「部下に暴言」をはいたり、「無理難題を押し付けたりするパワーハラスメント」が後を絶たないという。特に金融危機後景気悪化で「解雇」に絡むパワハラが目立っていると言う。
・ アメリカではパワーハラスメントなどあまり聞いたことがないが、日本ではとにかくなんでもハラスメントだ。まず古典的な「セクシャルハラスメント」、そして世に出たのが大学での「アカデミックハラスメント」そして企業での「パワーハラスメント」医者の「ドクターハラスメント」そして直近では「団地自治会ハラスメント」「幼稚園保護者間ハラスメント」などを聞く。その内に「食堂ハラスメント」とか「居酒屋ハラスメント」などが登場してくるのかもしれない。
・ 「夫が人前で立たされ上司に机の私物もチェックされているようだ」「上司から有給休暇を取るとは何事だ。社会人失格だ。」リストラの対象となり「まだ居たの?」「死んでもかまわん」「目障りだからちゃらちゃらしたモノはつけるな、指輪は外せ」「お前なんか居てもいなくても同じ」「お前は一番出来ない社員」とか色々ある。
・ 特に「退職勧奨や解雇予告に絡んでの相談」が多いという。えげつないと思うが通知と同時に「貸与パソコンの回収や事務所への立ち入り禁止、社員証の取り上げ」など「ロックアウト型」が目立っているという。
・ 最近の新聞記事に載ったのであるが、さすがに厚生労働省も放置できずにパワハラによる「うつ病」をきっかけに自殺したことを「労災」として認定し、最近「職場における心理的負荷評価表」を改正して「酷い嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」の項目を新設した。
・ 法律に絡む相談を受け付ける「法テラス」には職場のパワハラの相談が舞い込むが2008年10月から09年3月までの半年間に1126件で前年度よりも48%増えたと記事にはある。
・ この新聞記事の面白いのは「身を守る5か条」と言うのがあって「パワハラが深刻になる前に初期の段階で自分の行動パーンを変えよう」と言う提案である。大変理解できる。第一条は「しかられ上手になること、上司はどのような時に怒り、叱るのかを知れば回避行動」をどう取ればいいか明らかになってくるとしている。
・ 第三条には「自分が上司だったらと言う視点から考えると、ものの見方も変わる」とある。その通りだ。第五条には「文句を言わせないように実力をつける」とある。その通りだ。これを作ったパワハラ防止研修会社の社長さんは偉い。
・ 私は人からよく「元気ですね、パワーがありますね。身体全体にパワーがみなぎっていますね」と言われる。だから特にパワーハラスメントについては気をつけなければならない。本校の管理職もそこを心配しているのは顔を見ればよく分かる。
・ しかし私は「教職員を指導するのに臆することはない」「指導教育するのは私の仕事であり、責任」である。それをパワハラと取られたら「そうではないと証明」する用意に怠りは無い。嫌がらせや無理難題は押し付けない。出来ない人に言っても意味はない。問題は出来るのにやらない人だ。これは「サボタージュ」である。これは指導しなければならない。恐らく「言い方の問題」なんだろう。
・ 私は必ず「指導の履歴を文書で保存し、複雑な相手には必ず管理職を立ち合わせ」て1対1は避けている。重要と考える時は「テープに会話録」を取っている。特に就業規則違反は公立教員のことを思えば見逃すわけにはいかない。公立は厳しい。
・ それを「パワハラ」と取られたら仕方がないだろう。堂々と法廷論争するしかない。その覚悟は出来ている。それが出来なきゃ「学校改革」など進むわけがないではないか。「甘い言葉」で結局は母船を危うくするようなことはトップの責任ではない。真面目に一生懸命頑張ってくれている人たちを巻き添えにして「沈没」するわけにはいかない。
・ ところでジャック・ウェルチみたいに「暇があれば従業員をクビにすることを考えているか」という問いに対する答えであるが、私はそういうことは考えていない。彼みたいに暇はないからだ。