2009年4月14日火曜日

4月14日(火)私大生の生活費

・ 「多聞尚学館」の開館式も無事に終えて1月以来の重要な行事、イベントなどがすべて終わった。授業も始まり、学校には「落ち着いた雰囲気」が戻ってきている。このようにして「新年度」は始まっていく。
・ 「3年生は静か」であるし「1年生はようやく学校に慣れてきた」というところか。2年生は前にも書いたが5月末の「修学旅行」の準備で大変である。学年主任と担任の先生が走り回っている。「ご苦労様」
・ 気になるのは卒業した3年生が上手く「大学に馴染んでくれているか」ということである。これは高校関係者にとっては気になる問題で折角大学に送り込んでも「イメージと違う」「この学部ではなかった」などと「五月病」に罹ることだ。
・ もう一つは進学した大学の経営状態である。4月8日のブログにおいて今大学が「学生募集に躍起」で「ホームページ」なども従来の概念を超えて学生主体で高校生参加とか「イメージキャラクターの出現」とか様々な様相について書いた。言い換えれば「なりふり構わず生徒募集」に走っているとは言わないが、イメージ宣伝などで「誤った幻想」を高校生に与えるようなことがあってはならない。
・ しかし「私学経営については厳しい財政状態」であるらしい。約半分が消費収支の赤字で毎月毎月資産を食い潰している、言って見れば、「体力を消耗」しているのである。大きな要因は「学生が集まらないから」であるがもう一つの要因は「私学補助金の減少」である。
・ 「日本私立学校振興・共済事業団」は国が08年度に私立大学や短大、高等専門学校に交付した補助金の状況を発表した。4月6日の朝日他各紙が報道している。それによれば「873校に3248億円が交付されたが前年度から32億円少なかった」という。
・ 07年度から毎年1%ずつ5年間減額していくことを決めている政府の「骨太の方針」に沿ったもので2年連続の減少である。「真綿で首を締める」ようなやり方で本当に私大経営者は大変だと思う。
・ 交付先の内訳は「大学536校、短大334校、高専3校」で交付額のトップは学部生が6万9千人と最も多い日本大学で112億円、4万8千人の早稲田が93億円、医学部のある慶応義塾が89億円で3位であった。
・ 厳しいのは東北文化学園大学(仙台市)、創造学園大学(群馬県)、瀬戸内短大(香川県)、夙川学院短大(神戸市)の計4校は「経理に不適正」な点があったとして「交付が見送られた」と言う。
・ 又大幅な定員割れや「超過」などを理由に補助金を申請しなかった大学短大も47校あったと言う。「入れすぎても駄目」なのである。まさしく「私学冬の時代」である。我々も注意し、とにかく「コンプライアンスの精神と透明性」が最も重要である。
・ しかし大阪府の橋下知事がやったことは年率1%で5年間などの生易しいものではなかった。一挙に「私立中学で25%、私立高校で10%が削減」された。そして今年の生徒募集状況であった。「公立回帰」が確実に観察された。
・ 昨日大手の教育旅行社の支店長が久しぶりに見えられて色々とお話したのであるが話題はやはり各私立高校の今年の入学者数であった。この支店長は私のブログの読者で「全く今年の私学受験模様は例年と変わった」と私の見方を指示してくれている。
・ しんどい学校には生徒が溢れかえり、中位の学校が「割を食った」というか、公立回帰の「津波」をもろに受けているとの状況はその通りであり、学校単位で明暗が分かれているという。又大きな特徴として大学の系列にある高校が必ずしも生徒を集めたとは限らないと話があったがその内に中高連からまとめが出てくるだろう。

・ 大学生の生活はどうなのであろうか。ここに興味深い記事がある。「私大生の生活費も月度3万6000円」」にとの見出しの7日の日経の記事である。これによると首都圏の私立大に昨春入学し「自宅外通学」している学生の生活費が「13年連続で減り過去最低の36000円」になったというのだ。
・ この数値は「東京地区私立大学教職員組合連合」の家計負担調査で分かったという。この生活費では学生はアルバイトに頼らざるを得ない。首都圏の学生も地方から上京しては「日常生活が苦しい」のは目に見えて分かる。一日幾らで暮らせというのか。
・ この生活費は仕送り額の平均値95700円から家賃平均59700円を引いた値であるが、過去最も多かったのが1990年の73800円で現在は半分に低下している。それが36000円だ。
・ 計算すると「一日当たりの生活費は1200円程度」だから、これではろくなものが食べられない。勉強どころではない。従ってアルバイトにうつつをぬかすことになりかねない。日本は奨学金制度がアメリカみたいに充実していないからである。
・ 又自宅外から通う親の平均世帯年収は前年から45万円源の915万円9千円というから「最早年収1000万円ないと子どもを東京の大学には行かせられないのか」。受験料や初年度納付金、住居費などの入学の年にかかる費用は約305万円で年収の33%を占めている。
・ 学費などの負担について「4割の保護者が大変重い、重い」と回答した人の比率は91%だと言う。このため自宅通学生を含め5人に一人が入学費用などを「銀行から借り入れ」ており平均借入額は164万2千円と言う。「ローンを組んで子どもを大学」にやらねばならない。
・ 当然「奨学金」を希望しており、64%の保護者は希望し自宅外通勤では71%に達している。東京私大教連は「父母と学生の教育費負担は限界に達している。私大助成の増額や奨学金制度の拡充などで経済的負担を軽減することが急務」とコメントしている。

・ 私は以上のような記事や現実に大阪の公立高校私立高校で起きた今年の受験模様から「日本の教育システム」が大きく揺らぎ始めているということを実感する。ここまま行くと間違いなく「学歴神話の崩壊」に繋がるであろう。
・ 苦労して大学に行っても経済情勢は厳しく、就職に苦労し、デフレの中で昔のように高給や雇用の安定が期待できないとなったら一体どうなるであろうか。すでに高校段階からその兆候が出始めている。
・ 無理して「高校に行きとうはないが、親が高校までは行ってくれと泣くから受けに来た」と言う比率は徐々に増えてきている。今年の公立私立高校の受験にそのような気配が出てきている。定時制の受験生が溢れかえっているのだ。新聞記事である。
・ もう一つは都会の大学に「ファッション感覚で行く時代の終焉」だろう。私はもう一度「地方の大学の復権」が始るのではないとも感じている。「本当にしっかりと勉強する学生」が「地元の大学」で自宅から通い、学ぶというスタイルが再度正当化されるかも知れない。「大学の地方分権」である。
・ 私立大学はより大きい所はより大きくなって駄目なところは「淘汰」されていく。私大の半分がなくなれば日本における大学の存在価値は上がり、高校生はそれを目指して頑張るであろう。「大学卒業の意味」をもう一度我々は確認すべき時代にきているのではないか。
・ 大阪の私立高校で東京のブランド大学を冠に付けたものの今年の入学者数が20名以下と言う信じられない状況を「週刊誌」が取り上げている。「○○○大学の誤算、入学者が○○名と言う悲劇」とかなんとか。名前だけでは生徒は取れないのだ。年収1000万円ないと子どもを東京には行かせられないのだ。