1.自治体非正規職員 増える一方
・ 府内の自治体で正規職員に対する臨時や嘱託などの非正規職員の割合は2007年、4月現在21.8%、対前年度から1.3ポイント増で、とにかく「非正規化が進んでいる」との記事が少し前にあった。
・ 大阪労連が府と43の市町村を対象にアンケート結果を分析した数値だから間違いはあるまい。正規職員数は前年より5676人減少し、10万5046人だと言う。非正規職員は765人増えて2万9319人という。すごい数値だ。見た目、普通の校務員だが身分は非正規職員だという。
・ 河内長野市では非正規率がなんと53.4%と半分を超え、島本町でも48.7%という。又「自治体の一般事務の平均時給は817円」で民間パートの969円を大きく下回っている。岬町では「学校の校務員さんの時給が最低賃金と同じ731円」と言う。
・ 非正規職員は2ヶ月から最大で1年の短期契約だから昇給制度もなく、自治体が人件費削減を進めていけば間違いなく「官製ワーキングプア」を生み出すことになるとの内容だが、これでは「収入という感覚」には程遠い。まさしく「自治体ワーキングプア」だ。
2. 本校の非正規職員は?
・ 常勤講師と非常勤講師は「教職にある身」だからこの際、非正規職員の定義とは区分して考えておきたい。最も正規職員を「専任教諭」と定義すれば常勤講師の先生は契約期間が1年なのだから非正規職員ということも出来るが・・・。
・ 「本校が抱えている非正規職員は直雇用と派遣職員の2種類」に分けられる。結論から言えば、総じて「給与処遇は良い」と考えている。前述した自治体の非正規職員の時給800円から900円に対比して、本人手取り分換算で時間給は1200円以上であり最大で1500円というのもある。
・ 派遣職員の場合は派遣会社のコミッション分があり、実際は更に数百円単位で上乗せして支払っているのだから、コスト削減を優先させれば直雇用に切り替え、自治体レベルと同じ900円程度の時給で「募集したとしても、昨今の経済情勢下、応募者はすぐ集まる」と考えられる。
・ しかし現時点で私はそのような考えはとらない。皆さん、大変責任感が強くよく仕事をされるし、自治体のように最低レベルの時給などに切り替える積りはない。決して「ええ格好」して言っているのではないが、「ある程度の生活基盤の成り立つような労働条件の提示は労働組織体の経営側の責務と考えている」からである。
・ それは私が企業出身だからということもあるかもしれない。自治体の長の如く、民間での経験はなく、税金で賄うということしか知らない連中とは違うといいたいと深層心理としてあるかもしれない。
・ 派遣職員のお一人は大学卒で有名な大手企業に勤めておられたが、故あって本校に来て頂いている。陰日向なく大変良く仕事をされる。もう1人いる同じ種類の仕事のパートナーは正規職員であり、給与の違いは極めて大きいが、不満を漏らさず働いておられる姿には頭が下がる。
・ 直採用の非正規職員はこれまた難関大学卒の若い女性職員で将来のキャリアを目指して勉強中だ。本校をステップアップにして「資格を取り、将来に備える」よう激励している。このように非正規職員が本校で働いておられるのは様々な背景がある。
3.「ワーキングプア」働く貧困層の拡大
・ もうこの言葉は有名すぎるくらい有名になった。「NHKの特集番組」を見た方も多いはずだ。この番組を見たときに体が震える感じがした。働いても収入が少なく、まともに食べてはいけないワーキングプア(働く貧困層)が拡大している。特に若年層だ。大学を出て路上生活者だ。
・ 背景は経済のグローバル化にある。商品が海の向こうで作られ、日本に持ち込まれる形がどうも完成されてきた。言い換えれば日本の労働者が国内で作ると人件費が高くついて安いものが国民に供給できないから海外依存となるということだ。
・ これは「経済のグローバル化の宿命」で、新興国、中国やインドなどより高い能力と技術力を有しないと新興国の低賃金に引きずられて空洞化が生じるのは経済合理性の至極当然の結末である。かっての日本もそのようにして欧米諸国を追い上げたのだから。
・ もう一つの理由はバブル後企業はこぞって「リストラ」を行い、一旦高齢層の人員整理をした上で、「正規職員で補充をせず」、「非正規職員」に切り替えたものだから、ますます格差に拍車がかかってきた。「労働力の構成が大きく変わってきた」のである。
・ いまや日本の労働力で1/3、即ち働き手の3人のうち、1人は正社員ではない。その数1700万人で、内1000万人に人が年収200万円以下だというから「厳しい」。
・ 大学を卒業しても職がなく家賃が払えなくてインターネットカフェに寝泊りする人や路上生活者が若い世代で増えているという。これでは日本の将来は暗い。このまま勤労社会に高齢者が増えて行ったら社会はなりたたなくなるという指摘は少なくない。
・ 年金問題や高齢者医療の問題は大切だけれども、それよりも私は「若い世代への対応」に国家や自治体の施策を切り替えていかないと国家衰亡の危機を感じるのだ。どうも高齢者対応に視点を当てすぎていないかとの疑問が心から消えない。
・ 少子化であるからますます青少年対策は重要である。「年寄りはもういいとは言わないが」、一人の若者が背負う年寄りの数はどんどん増えて、しかも「若者の仕事がない」ではどうしようもない。人手不足と言うが人手はあるのである。「その人手を年寄りが占有するから若者に仕事がまわって来ない」との視点がある。
4.浪速高校の一つの試み
・ 以上のような観点から小さな組織体であるが私は「若者に職の提供と待遇の改善」を考えているし具体的に動いている。本年度がその起点になる。まずベテラン教職員に「十分なる割増金を付け早期退職優遇制度」を導入して適用した。
・ 本校では65才定年制であり、この基準そのものは残し、61歳から1年単位で「選択定年制」を導入した。この結果により平成20年3月31日付けで60才超えの教職員が殆ど退職していった。「後進に道を譲る」としてである。
・ その結果、「若い先生方に職を提供することが出来た」のである。当て嵌めには非正規職員に相当する非常勤講師ではなく、「常勤講師」を大量採用した。常勤講師の数は総勢40名を近くなる。常勤職員には一時金・賞与が支払われ、非正規職員に比べ格段の処遇改善だ。この中から将来の正規職員、即ち専任教員が誕生することになろう。
・ 常勤職員の先生方は概してお若く20台で中には大学新卒というお方もおられる。このような劇的な変化が何を学校にもたらしたかと言うと「完全に学校の雰囲気が変わってきた。」又時間講師ではないため、「時間割編成が極めて楽」となり、教育効果そのものにも大きな効果が期待できる。
・ 私は「若者の味方」である。若者の可能性と力を信じ、「若者の応援団でありたい」。生徒についても全く同じ論理である。着任以来既に1億5000万円以上の投資をして教育環境も改善、施設設備の改造リフレッシュ工事を進めてきた。
・ 今までは全て教職員の給与となって消えていたものを少し生徒に回してきたのである。私が若者の味方だと言っても、別に「年寄りが嫌い、ベテランを排除」との論理ではない。ただ仕事もせず、努力もせず、給料だけが高くて「偉そうにしている」教職員を見ていると許せないのである。
・ ベテランはベテランらしく「イチローや兄貴金本」のような仕事をしなくてはならない。副校長の観察によると常勤講師の先生方は遅くまで残って仕事をしてくれているらしい。ベテランは早く帰って残っているのは常勤講師だけというのは頂けない。最も勉強することが多いから常勤講師の先生の居残りがすべて「業務、仕事」とは私は見てはいない。
・ セイムワーク、セイムペイではなくて最近読んだ本では「セイムバリュー(価値)、セイムペイ」だと言っている。その通りだ。人材育成評価システムで徹底的に能力・業績を明らかにして「適切な価値バリューの評価によって適切な処遇格差」をつけるつもりだ。