東京都「塾費用、低所得層に融資」
1.親の経済力格差が学力格差?
・ 都は昨日、「低所得層を対象」に受験生の学習塾代や大学などの受験料を今秋にも無利子で貸し付ける制度を始めると発表した。「親の経済力で子どもの学習機会に格差が生じるのを防ぐことが狙い」である。返済の免除も検討しているというから「見た目は立派な話し」だ。しかし本当にそうか?
・ 昨年の全国学力テスト、中学3年生の数学基礎問題で塾に通っている生徒の正答率は82%で、通っていない生徒の68%を大きく上回っているように、「塾が学力に大きな影響を有している」のは現実の姿であろう。本校の分析でもその傾向はある。
・ 東京もそうだが、大阪府でも、全国の自治体でも、従来から生活保護世帯の家庭を対象に「就学援助」、即ち「授業料などの減免措置」は講じているが、今回の「塾費用まで面倒見よう」と言うのは初めてで京都府教委は「想定の範囲外」とびっくりのコメントを出している。
2.大阪府のコメント
・「こんな大盤振る舞いはとても無理」とため息をついたのが「大阪府」という。1100億円の財政再建案をまとめたばかりの大阪府にはこのような発想さえ出て来ないと思う。
・ 「東の東京、西の大阪」というが、もはや大阪が日本の西の拠点などと思っている人も居ないと思うが、これほど「自治体の行政力に差」が付いているだ。残念だがこれが現実だ。「どうして大阪はこうなったの?」この解析が大阪府から出てこないのがおかしい。
・ 「子どもが笑う大阪を!」と言って当選した橋下知事であるが、子どもが笑うどころか「悲しむ方向ばかりで」、ご本人も苦闘されている。しかし前にも書いたが「ここが正念場」だ。頑張らねばならない。知事の言われるように、ここは一旦「戦線を縮小」し「体制を立て直して再出発」だ。「聖域なしでやられれば良い。」
・ 傍が「存続運動」とか、「市町村長が何と言おう」が「収入の範囲内で支出を考える」のは当然のことで「ゆっくりとやるというのは嘘」だ。「時間をかけるというのはやらない、やれなくなる」ということと同じだ。反対の大合唱にはピン芸人の小島なんとかさんでも呼んできて「そんな事、関係ねー!」とやれば良いのだ。
3.背景には「公立不信」が?
・ 私は「塾、予備校」を否定しない。彼らは彼らなりにノウハウを蓄積し社会的存在として認知されてきた。当初はハザマ産業と揶揄され、文部省に嫌われ苦労したが、辛抱強く我慢し、実績を積み上げてきたからこそ、今日の地位を勝ち得た。
・ 背景にははやり「公立の頑張り不足」があると思う。今回の東京都の塾費用融資の話も、何故公立の教員は「我々でやります!」と言わないのだろうか。低所得世帯で学習意欲の高い生徒を「学校で教員が塾の代わりをしないのか」、ここがこの記事から感じる私のポイントだ。
・ 「教員は労働者」「時間外業務は無料」などの長い間の労使間協約の悪い部分がここには見える。公立学校はますます地域格差、経済力格差が子どもの学習環境に影響を与えるようになってくる様相だ。
・ だから特に「東京は私学が強力」になってきた。私学、塾、予備校の全盛時代だが「公立の不作為が後押し」したとも考えられる。大阪の公立は私の意見では日本一、頑張っているのではないか。「大阪の公立は強い、ただし公立高校だ。」しかし義務教育は別だろう。
・ 大阪府のように財政難自治体では学級当たりの生徒数は減らされず、先生の数も減らされ、私学助成金も削減され、そうでなくとも全国45番目の低学力水準で、「今後どうなるのだろう」と正直考え込んでしまう。
・ 本校には父親の転勤で東京に移り住む可能性ありという生徒が中学校にいるが、「東京行き」を喜んでいるに違いない。是ではますます「東京の一極集中」だ。
4.教師の兼職兼業を認めよ
・ 前からの私の持論であるがもうぼつぼつ「教師の兼職兼業」を認めなければならない。昼間は学校の教師、夜は居酒屋でアルバイトを認めよと言っているのではない。せめて自校の生徒を学校で「夜、土曜日に塾代わりに補修補講する」くらいは認めよと言っているのだ。本校では認めている。
・ このことは「手当を出せ」と言っていることだ。公務員は厳しく兼職兼業が規制されているから杉並の和多中学校のように学校で「夜スペシャル」と称した塾講師が先生の講習が開講されたりする。これも学校の先生がやらないからだ。やらせられないからだ。
・ そこに、時には「塾や予備校の先生を呼ぶ」ことがあっても良いではないか。「公教育の底上げが必要」との総論には皆賛成だが各論となると文部科学省、教育委員会、学校、組合の意見がまとまって終息しない。その結果、結局は現状維持となる。迷惑を受けているのは子どもたちである。
・ 昨日のブログにも書いたが専門家をもっともっと学校現場に入れなければならない。「なんでも教師」の概念を打ち破る必要がある。「教師は万能ではない」のだ。