学校裏サイト問題とプロフ
・ 今朝の朝日にだけ小さな記事が載っている。水戸市近くの大洗というところの県立高校の女生徒が05年に入学した当初から「携帯からのいじめ」にあい、不登校となり結局退学せざるを得なかったことに対して、書き込んだ女生徒2人に200万円の「損害賠償訴訟」を起こしたというものだ。
・ この記事で注目しなければならない点は「ネットいじめが訴訟の対象」と言うことである。このブログでも書いたが今年3月に発表された文部科学省の調査で全国38000以上の裏サイトがあるとされ内2割は個人を対象にした誹謗中傷であるという。
・ そしたら夕刊で結構大きい記事が飛び込んできた。これは各紙とも報じている。7時のNHKニュースでもトップに報じていた。インターネットの「プロフ(自己紹介サイト)」に悪口を書かれた報復に中学生を「殴り殺そう」として無職17歳が逮捕されたというものだ。
・ プロフなどパソコンで変換できない新語で「プロフィールファイル」の略で、書式は決まっており、自分の趣味や特徴などを公開し、「友達つくり」などに利用されるものらしいが、私も数ヶ月前にその存在を初めて知った。最初は「プロフって何だ?」などと聞くくらいだから「もう、河島英悟の”時代遅れ”を感じる」。私でさえそうなのだから一般の年老いた教職員は「チンプンカンプン」だろう。「プロフって果物?」などと言いかねない。
・ 背景は記事によるとこうだ。中学3年生と少年は直接顔を合わせたのは今回が初めてで「中学生のプロフに悪口や半殺しにしてやる」などと書かれ、住所などを割り出して千葉県流山市の公園で金属バットを使い頭を数回殴って殺害しようとしたもの。中学生は頭の骨を折り意識不明の重態という。
・ この事件のポイントは「顔を見たこともない人間に対してネットの悪口だけで殺意を持って凶行に及んだということ」「中学生がパソコンと携帯に対応したサイトを有していたということ」である。事態は遂に「ここまで至れり」という思いだ。中学生がパソコンと携帯を操作して書き込んだりしているという現実に驚愕する。
・ 本校では昨秋、大きな「ネットいじめ事件」があったがこれは高校生であった。このときは素早く対応して処置を明確にし、その後、生徒指導は徹底したつもりである。そのときの調査では「極めて多くの生徒が個人ホームページやプロフを有している」ことが判明した。
・ ところが本校でも中学校でネットの事件があるような事案が昨日来判明し、今教員が「追いかけて」いるところだ。どうも「成りすましメール」事件みたいだが看過できないので、この件については明確にさせるつもりだ。高校のみならず中学もだから、「ブルータス、お前もか!」というところだ。
・ 裏サイトの存在が明らかになったのはこれまた大阪からであるが2007年4月に大阪府警がある中学校の学校裏サイとの管理者を書類送検したことで学校裏サイとの存在は広く知られるようになってきた。
・ この事件は「名誉毀損的な侮辱的な書き込み」であったため、書き込んだ者のみが処罰され、管理人側には幇助罪が適用されることはなく嫌疑不十分で不起訴処分となっている。この一件で分かるように「学校裏サイトは警察などの機関が動けば個人の特定は不可能ではない」。その場合の条件は警察への「被害届の提出」となる。
・ 学校裏サイトの問題としては「学校側の調査に限界」があることである。携帯を取り上げて中身を調べることは出来ないし、チェーンメールで送った先を調べることには限界がある。「成りすましメール」となって他人の名前をかたり送ったりするとますます分からない。
・ 携帯を2台保有し一つは「隠し携帯」でもなればもう全く駄目だ。又個人パソコンから発信するとIPアドレスでも把握しないと「発信源」は特定できないし、それは現時点では「犯罪捜査の警察以外不可能」である。基本的に「 私は警察を使うことをためらわない。」
・ 早い段階で勝負をつけなければならない。この学校裏サイト問題は本校では存在しないと言う状態に早く持って行きたい。それは「学校の管理レベルと品格」が問われていると強く感じるからだ。
・ それにしても「大変な時代」になってきた。今後ますます世の中は良いか悪いかは別として「変質していく」。今までの問題は生徒個人の学習意欲、喫煙、万引き、カンニングなどの「個人的問題行動が主体」であったから、学校は保護者を呼び出し、ともに「指導を加える」ことで事は済んでいたのだが、ネットいじめになると簡単に解決できないのだ。「学校もアナログからデジタルに視点を移さねばならない」。
・ 「卑猥な映像」を送り付けられたり、「殺す」とか「死ね」「キモイ、ウザイ」などを送りつけられた側の保護者は「一体学校はどうなっているのか」と詰問して来るだろう。学校以外に言うところはないから、分かるような気もするが書き込みは学校の生徒だけではない。逆に疑いのある生徒を学校が追い詰めていくと明確な証拠が取れないだけに「わが子を信じる親」からは人権侵害と保護者から訴えられかねない。
・ 不特定多数で見えない顔、それも他人に成りすましたり、架空の人物を仕立て上げたりすればますます複雑ではっきり言って学校では無理だ。もう「警察のマター」だろう。学校にとってますます難しい複雑な時代になってきた。
・ 事態の深刻さはそれが局地的、部分的ではないとうことだ。「北は北海道から南は沖縄まで、そして小さな町、村まで携帯電話のアンテナがあるところは同じことが同時に起きている」ということだ。私はこの現実に愕然とするのだ。少なくとも本校の生徒だけでも「ネットのいじめ」などは撲滅する気概で頑張っていきますとか今のところこれ以外に言えないのが辛い。「完全にデジタル社会の病理が出て来た」。