2008年2月18日月曜日

2月18日(月)総合的学習の時間

1.新学習指導要領「総合的学習の時間」
・ 本件、今までブログで何回も触れてはきているが、ようやく本決まりの形が出てきた。15日の朝刊はまさにこれ一色の感がしたが、しばらくその後の状況を静観していた。少しづつ新学習指導要領に関わることがマスコミ報道に出始めてきている。
・ でも大体扱いは小さい。花火みたいにパーッと出るが後は段々と小さくなる。そして又何時か教育問題が出ると扱いは大きくなるのが何時ものパターンだ。一般的に国民も学習指導要領となると「うんツ、関係ないわ」という顔をする向きもある。中には教育評論家と称する先生方も内容を知らなくてテレビであれこれ教育問題をコメントしたりするからお笑いだ。教師の中でも案外知らないというか、勉強しようとはしない人もある。
・ 新聞記事には今日まで随分と世話になってきていた身だから言えるのだが、「新聞社で教育を司るのは勿論教育関係の記者」であるのだが、大体所属は「花形の社会部」に属する。言い換えれば社会部の一部門であるということである。記者も3年未満でどちらかと言うと若い記者にローテーションされていく。政治経済記者みたいに「この道一筋」という記者は余りいない。
・ 新聞社で教育部門が独立した組織・部というのは余り聞いたことが無い。従って毒入りギョーザ事件などや社会問題や政治経済の大きな内容があるときには教育の記事は時に吹っ飛ばされることもあることは知っておかねばならない。「教育の持つ重要さと軽さの扱いを持つ宿命」みたいなものだ。
・ 今回の改正で何と言っても目玉は「総合的学習の時間」だ。新指導要領では時間数が削られ主要科目に置き換われる運命となった。しかしこれは大体、初めから分かりきった話で「理念先行型の失敗」の典型な例である。大阪府の橋下知事流に言えば「机上の空論」であったことは間違いない。
・ 高校課程では「教科力向上」のために、一つの学校隠語ではあるが「置き換えて読む」とし、源氏物語の英語版を教材に選択して、一応は「日本文学と国際性」などの名目で授業をしているが、内実は「英語の授業」となっていたりするのである。
・ 新学習指導要領の問題は今後小中学校を主体に出てくるだろうが、本筋を外さないことが大切だ。導入当初、現場の教師は「総合的学習」に反対していたが、今でもベネッセの調査によれば小学校教員のうち、「無くすに賛成」は68%にもなり、「増やすべき」は0.8%という。
・ 教師に賛同を得られない教科の行き着く末はこういうものだとの見本みたいだ。私も講演などで時に「子どもを町に散策させて、桶屋さんが桶を作るところを見せ、職人の世界と我々の生活のテーマを無理やり総合的学習時間だと理論つけてもなー?」と、気に入ったフレーズで良く使ったものだ。
・ 早速今朝の読売は「学校は変わるか・・新学習指導要領」の特別記事で「街の探求の名目で近所を散歩している」と揶揄されるところがあった。これには笑ってしまった。同じようなことを感じる人はいるのだなーと。ところで文科省は「けしからんというか厚顔無恥というか」。PISAの順位低落で危機感を持った文科省は総合的学習とPISA型の応用力向上を結びつけそうな動きが出てきた。
・ 「又ゾロ、教師にとって何をして良いか、わからなくなってしまう危険性がないだろうか」。心配になってくる。今、日本からフィンランド訪問が急増しているというが、意味も無く出張しても効果は期待できない。とにかくしっかりと教科を教えることだ。すべてはここから始まる。
中学校で言えば新学習指導要領の規定する時間数は略3045時間、うち総合的学習の時間数が190時間となった。とにかく420時間と英語強化が特に目に付く。次に数学、国語、理科が385時間だ。
浪速中学校は20年度カリキュラムで言えば3745時間だから指導要領に比べ700時間も多い。700時間と言うのは700コマ数で年間35週で1単位であるから何と20単位も多い。内訳は国語、数学が各660時間(385時間)、理科が420時間(385)である。英語については450時間としているが、「英語が少ないではないか?」との質問に答えよう。
・ 総合的学習の時間は逆に210時間と指導要領より20時間増やしているが、これは全て英語教育で「総合TT」と称するものはでネイティブスピーカーとの連繋授業とし、「総合英語」の組み合わせで実に210時間、従って英語で言えば総計660時間となる。これはすごいぞテーマは「国際理解と地球環境」だ。これ以上はない格好のテーマである。考える力と読む力、それに英語力もつく
・ 徹底的に「鍛える」。鉄は熱い内に鍛える。そして「習熟度別授業」だ。言葉は「発展別」でも「理解度別」でも「スピードコースとじっくりコース」とか、どうでもよいが「生徒の力を伸ばす」ことが目的で、遅れている子は「分からせてあげる」、出来る子は「もっと、もっと上に引き上げる」ことをやる。私のいう総合的学習の時間とはこのような「英語の授業」を言う。
2.雅楽部フランス演奏中止
 ・かねてから本校雅樂部がフランスのトッール市のある有力団体から招かれ古城ボールギャール城にて日本の書道展、絵画展、など文化交流への行事参加を依頼されていたが、もともとの予定、8月の夏休みが4月中旬になったと日本側の主催責任者から緊急連絡。
 ・残念だが今回は見送り。4月中旬は行事が立て込んでおり、学校はとても出せる状況にはない。次回のチャンスを待ちたい。新1年生の修学旅行は本校初めて海外に出す予定としており、基本的に海外案件は無理しても出してやりたいが、4月はどうしようもない。
3.高校入試1.5次合格発表
 ・本日10時、1.5次合格者掲示。あれほど一次で志願者が集まったのに「何故ですか?」という質問には「可能性がある以上門戸を広げておくことは学校の責務」と考えているから。
・ 今回は理数科とⅠ類である。入試成績を見るとなるほど粒が揃っている。彼らが来るかどうかは公立発表までは分からない。これで一切の入試業務が終わった。3月24日の公立発表まで静かに待つ。
4.校務運営委員会 新1年生の転科転コースの議論
 ・まだ見ぬ生徒であるが、準備は今からしておく必要がある。入学時には科・類を決めて入学して貰うが、1年生時の実力試験で2年進級時に適性を考え、振り分けるものだ。良い議論になった。最近校務運営委員会の議論が中々良いものになってきた。大変結構だ。
5.近隣38校授業料比較
 ・平成15年からの近隣38校の中学、高校の授業料比較が出揃った。近隣というのは北摂の高校と比較しても意味がないと考えたからだ。入試広報室がまとめたものだが、大変興味あるデータである。1学期中に21年度入学生についてどうするか決めようと思う。少しは「値上げをお願いいたしたい気持ち」はあるが「果たして・・・」。
6.ベルリン映画祭「母ベえ」、受賞を逃す
 ・鳴り物入りの宣伝で大いに盛り上げようと図った、山田洋次監督作品、吉永小百合主演の映画「母べえ」は結局受賞を逃した。それはそれで良いとして、何と無名の熊阪監督の「パーク アンド ラブホテル」という見たことも聞いたこともない作品が新人作品賞の栄誉に輝いたという。
 ・確か、この前も奈良の無名女性監督の映画が他の国際映画祭で受賞されるなど、巨匠と言われる監督や大きな制作費をかけた映画から、無名の作家のそれも今日的なテーマを真正面に据えた映画が評価される時代になって来たか。大きな時代の流れを感じる。
・ 映画好きのOさんも「母ベえ」を観に行かれたが、頂いた感想文からは胸を突いてくるようなものは感じられなかった。戦時中の特高警察が出てくるような暗い世相の中で、母の強さ、優しさを出した主題は今の時代にどうなんだろう。山田流の反戦平和主義が欧州では受け入れられなかったということではないか。
・ それに比べ「北辰斜めにさすところ」の神山征二郎監督作品は良かった。同じ戦中戦後の物語だが、こちらは「教育の持つ素晴らしさ」が伝わってきた。「母ベエ」を観たOさんは「これは一つの恋愛映画です。」と面白い見方をしているところが興味あったが、山田監督、どうもまだ「フーテンの寅さんの残像」を引きずっているみたいで、残念な気がする。私は観に行かないと決めた。