2008年2月22日金曜日

2月22日(金)初芝学園問題

1.大阪初芝学園問題
 ・昨日の読売の朝刊には5段扱いで結構大きく取り上げていた。その内容は「初芝学園へうどん店など外食チェーンの“グルメ杵屋”からの出向は違法として」大阪労働局が是正指導に入ったと報じているものである。初芝学園の全教員361名のうち96人は「グルメ杵屋の社員」で、そこから学校に「出向して教えている」という形が「違法な人材派遣」に当たるとしてグルメ杵屋と学園を「職業安定法違反で是正指導」したというもの。
 ・初芝学園の教員採用形態は「学園が1年間は常勤講師として採用」、勤務態度が良ければ2年目以降は「グルメ杵屋の正社員として採用」され、「学園に5年間は出向する形で教員職を務める」そして「7年目以降は出向期間を更新して学園での教職を続けるか、自主退職するかの選択」があるとしている。
 ・学園側は「少子化の中で学園経営が困難となった場合はグルメ杵屋の社員ならば雇用の場が保障される」と説明しているが、労働組合は「学園の意に沿わないなどの理由で出向が打ち切られたら教員の仕事が奪われる」として反発していたものらしい。
 ・しかしながら労働局は実際にグルメ杵屋に戻った例もなく、学園と杵屋には資本関係はなく、給与は100%学園が支払っていることなどから、「実態は出向ではなく、労働者供給事業に当たると判断」したものらしい。
・ しかし「これはひどい話だ。」とても出来る話ではない。教員は「教員というアイデンティティこそが唯一の誇り」であり、良いも悪いもそこから出発している。社会も大昔から「教職という職位に高い尊敬の念」を与えてきており、だからこそ教員は頑張れるのである。
・ 国家試験をとり、さあ「教員になれる」と張り切って応募したら「貴方はうどん屋の社員です。5年間はうどん屋から学園に出向してもらいます。」では可哀想を通りすぎた残酷な話だ。私ならとても出来ないし、そのような発想はしない。
・ 最も初芝学園が経営難で教員の給料の60%くらいしか財政的に支払えず、残りの40%は親会社の「グルメ杵屋が支払って」いたとすれば、まったく別次元の話である。「グルメ杵屋は社会から教育に理解のある素晴らしい会社」との賞賛を受けよう。前理事長はまさに晩節を飾る立志伝中の人物で後世名が残ることになった。
・「出向ということ」を杵屋も学園側も知らなかったのか、この点が不思議である。その場合は教員の身分はグルメ杵屋の所属社員にして100%教員としての給料を支払い、60%は学園から杵屋に「戻し入れる」必要がある。これを出向先からの「戻入」と呼び、金額を「出向差額」という。これが「通常企業の出向の形態」だ。
・ ところが実態は初芝学園は「グルメ杵屋の子会社ではない」し、企業法人とは違い「公益法人」である。資本や株券を持ち合うなどの関係ではなく、単なる理事長が同一人物だけという形であり、労働局の指導は当然だと思う。「元来あってはならない話」だと私は思うが、良くは分からない。どうして今まで問題にならなかったのか。
・ しかし、昨年秋以来、不適切な会計処理、理事会運営などが発覚し、私学所管の大阪府私学課の指導処分を受け、本年1月10日付けで理事長職を辞任されたが、ここに来てこのような報道が出てくることは、私学経営にあるものとして「心せねばならない。」
・ 初芝学園は1937年の創立で堺を拠点に大阪、和歌山、で8つの小、中、高、幼稚園を経営しており、91年、今から17年前、経営難で苦しんでいるところに、頼まれ、前理事長は負債支払いの個人約束をして経営再建に乗り出し、無報酬の中で、「路頭に迷ったかも知れない教職員の生活の安定を結果として確立したお方」である。
・ 個人的にも大変良く存知あげており尊敬する人生の大先輩である。今回の一連の結果は残念で仕方がない。もし私がお傍にお仕えしていたら、決してこのようなことにはしなかった。理由にはならないが専任の理事長ではなく、専務理事や内部理事の責任も大きく問われるべきであると考える。
・ 近隣の私立学校であり、長い間競合してきた親しみのある学校だ。早く学園内部が人心共に安定し、「ライバル校」としてお互いに切磋琢磨して参りたい。そして本校の教職員には「出向などどこにもさせないから、安心して教員としての仕事に邁進」するよう伝えたい。
2.スト教職員を処分へ
 ・北海道と札幌市の教職員の14000人近くが処分される動きがあると朝日新聞は本日の朝刊で報じている。他紙は記事にしていない。こういうのに朝日は敏感だ。北海道と札幌市の両教育委員会は教員団体が1月30日に実施した「時限ストは違法行為」として「処分」をするというもの。もっとも処分と言っても大半が戒告で減給や停職には至らないとしているが行政処分だから重大な話だ。
・ 公立学校の教職員でつくる北海道教職員組合(北教祖)が「査定昇給制度の導入反対」を掲げてストとしたが、その参加者は全教職員の1/3の1万4000人に上ったという。明らかに公立学校の教職員の争議行為は地方公務員法で禁じられており、それを分からないはずは無く、「確信犯」として違法行為に走ったものであろう。
・ 処分は覚悟で「如何に行政は教職員を分断するような愚かな政策を学校現場に導入するのか、我々は絶対反対だ。」と気勢を上げてのことだと思うが、今や「教職員の人事評価システムは国家公務員や大学も含めて多くの学校が導入している。社会の要請というか、世の流れ」である。反対しても仕方がなかろう。反対の姿勢だけは示しておこうというのも返って世の反発を招くことにならないか。そこが心配だ。
 ・処分はあたり前で「法律違反の報い」は受けなければならない。しかし未だにこのような組織がある事態が驚きだ。肝心なことは2/3の教職員はストに参加していないということだ。心では査定昇給制度に反対でも覚悟を決めている教員も多いということではないか。大阪府でも査定導入制度が実施されたから4年経つがストなど聞いたことがない。少し情勢認識が甘いのではないかと感じる。