2008年3月30日日曜日

3月30日(日)その1 学校社会の格差問題パート1

 寒い朝である。特段何もすることがなく、従来から考えていたことを今文字にしている。テーマは「学校社会の格差問題」である。実は伏線があり、一昨日28日のブログ「常勤講師の先生」、29日「結婚披露宴参列」と言及してきており、一連のシリーズとして遂に今日のブログは「常勤講師問題に直接切り込む」ものとした。4月1日には新しい常勤講師の先生方に初めてお会いできる。
ある勘の鋭い事務室の職員が何時か「理事長のブログの出す順番は絶妙に設計されていますね」と言っていたが、絶妙かどうかは別として、当然「書く内容と順序」は大変気をつけている。それを考えないブログは芸能人の「昨夜、おいしいものを食べました」程度のものになってしまう。
今までの常勤講師の先生とは「契約が終わり」、4月1日以降40名近い常勤講師や派遣会社からの社員が新たに本校で勤務される。「時は今」だ。明智光秀流に言えば「土岐は今、桜したしる弥生かな」だ。本校の正規雇用教員も非正規雇用教職員(?)もじっくりと読んで欲しいと願っているが・・・。借り物ではない私自身の論考である。

学校社会の格差問題(その1
1. 一般企業社会の格差問題の理解
・ 「小泉改革で格差が拡大」というのが一般的な世評であるが、私はそのようには思わない。確かに声高に「市場化と聖域無き改革」を叫んだが具体的な政策が何かといわれてもすぐ思い付かない。小泉改革が格差問題を生み出したと私は考えない。
・ 明らかに「バブル崩壊後のデフレ社会」の中で、物の値段が下がるという戦後経験したことがないような経済状態を経験し、「企業がリストラ推進」の名目で「正規雇用社員を非正規雇用社員に切りかえながら、総人件費の抑制を図る」ことと、「経済ソースをコストの安い海外調達に切り替える」ことが現在の格差を生み出したのである。
・ 資源を海外、特に中国やインドに求めることは、これも「形を変えた人件費の削減の意味」であり、そのように読まねばならない。加えて「団塊世代の正規社員が大量退職」する時を迎え、その置き換えに相当数の正規雇用社員ではなくて新たな知恵を生み出し、「アウトソーシング」として「外部に発注するシステムを完成」させた。
・ しかしこのような動きはバブル前の相当早い段階からなされてきており、例えば「保安防犯業務」などを今社員の手で実施している会社はあまりあるまい。「清掃業務」も外部発注だ。今や給料の算定支給業務なども外部委託され、企業内の人事給料部門は必要最低限の社員で対応している。
・ 正規職員と非正規職員の格差問題は基本的に「昔からあった話」で、それが経済活動の低調が続く中で「顕在化」してきたに過ぎないと私は考える。給料が上がり続ける時代にはお互いが並行状態で分配がなされていたから、大きな問題にならなかったが、結果として「全勤労者の三分の一が非正規雇用社員」となったから問題となってきたのである。問題は「数の多さ」である。
・ もう一つ格差問題で見逃してはならないのは一部門丸ごとの非正規への切り替えではなくて「同じ職場内で正規と非正規が混在」し始めたからである。これは従来無かった現象で、あっても極めて少なく問題とならなかったのが、これも「数の多さ」が課題を突きつけてきたのである。
2.言葉の定義
 ・ 「学校における非正規雇用社員の定義を明確」にしておかないと議論がおかしくなる。社会でいう非正規雇用社員は一般的に「パート労働」という。もう少し範囲を広げて「派遣社員」を含めても良いも思う。
・ 「学校の常勤講師と非常勤講師の先生を非正規雇用職員と呼ぶか?」呼ぶ訳には行かない。パートでもなければ派遣でもない(一部英語教育には派遣教員はいるが)。「契約雇用職員」(木村の造語?)が正しい呼称であると私は考えている。
3.本校の非正規雇用社員
・ 本校には「直接契約のパート労働者は存在しない」。確かに校内清掃業務に当たっておられる方々は総勢6名のグループで午前、午後に分かれたパート労働であるが、本校が清掃会社に「○投げして契約」し、ご本人たちの契約には一切学校は関知していない。4月以降「改正パート労働法が施行」されるが、どのようになるのかはその会社のマターで我々は知る由もない。
・ ところが「校務(技術)員」さんは現在2名存在しているが、1名は正規雇用職員で1名は「派遣会社からの派遣」である。直接的雇用契約はない。事務室にも2名の派遣社員が存在する。男女各1名で男性のお方は最近新たに増強して来て頂いているお方だ。あと入試広報室には「時間給直接契約」の職員がお一人いる。
・ 課題と感じているのは「校務の仕事」と「事務の仕事」であり、これはまさしく現在の社会問題とされている「同一仕事での正規・非正規の混在」である。「年収差は正直極めて大きい」
・ 年収差がそのまま「大きな問題」と言われても、こちらは困るのであるが、「ここに至る経緯、本当に同じ業務か?」という提議はあるだろう。見た目は同じような仕事でも実際の中身は異なる」と反論を受けるかも知れない。
・ 何時かはこのような仕事がなくなるかもしれないという前提で「自由度を高める」ために「派遣会社に頼んで派遣して貰っている」のであり、経済問題はその会社との話し合いで終結してもらわないといけない。そこまで我々は責任が持てない。
・ 恐らく派遣会社への求人希望がある限り、派遣社員と派遣会社とのクールな乾いた関係は保たれるのであろう。「厭だったらお辞め頂き、他所へどうぞ」と言われるだけだろう。
・ しかし派遣社員の仕事ぶりを見ている限り、「素晴らしい」と感嘆せざるを得ない頑張りだ。これらに対しては正直頭が下がる。我々の出来ることは契約会社との契約単価のアップと福利手当てなどを直接に手渡す気遣いくらいしか今のところない。「本校の派遣社員は本当によく働く」。
4.トラブルの事例
 ・ 「直接雇用と派遣職員との違いでトラブルになる事例」は結構多い。どこの事例とかは言わないがここに典型的なレポートがある。「英語教育に必要なネイティブスピーカー」を大体どの学校も保有するのであるが、「契約の違いで大きな問題となる要素をはらんでいるのだ」。
 ・ 公立学校はすべて教育委員会の契約で直接学校が契約することはあり得ないから、現場は気が楽で「問題あれば教育委員会に言えば問題はすぐ解決する」。それは派遣会社が契約に違反しているのだから「議論の余地も何もない」のである。すぐ講師を差し替えたり解雇出来るからである。
 ・ 問題は私学で「多少の派遣会社の管理費を削減」しようとして「直接契約」にしようものなら「大変なことになる要素」を抱え込むことになる。契約に関する一切の労働上の契約、雇用保険、健康保険などを自らの責任で対応しなければならない。
 ・ 「当事者能力があれば特段問題とはならない」のだが、こちらにその力が無い場合、「ややこしい」ことになりかねないのである。ある学校に2名の外国人教師がおり、1名はテレビコマーシャルで最近「座頭市」が出演している有名な派遣会社から、一人は直接契約だ。問題はこの直接契約職員だったらしい。
・ 自らの強い意志で派遣から直接雇用に切り替えさせ、今度は「正規教員と同じ一時金賞与」を要求して来たらしい。「やってることは同じだから同じように支払え」というところだ。加えて「外部の労働組合に加入」し、組合を通じ「保険」についても要求し、要は自ら「格差の解消」にあらゆる手を使って動き出したのである。「就業規則の英語版を要求」してきたこともあったらしい。
・ 確かに同年齢の日本人英語教師と比べて収入格差はあるらしが、この場合は仕事の内容が全く異なるのではないか。自分は「フルタイム正規職員」であるとの主張に対してその学校の経営者は「貴方は年間勤務時間が少ないパートタイム労働」であると論破したらしいが、顧問弁護士をまじえ、円満解決に相当な時間と労力を要したらしい。
 ・ この影響からか派遣会社からのもう一人の外国人教師も「直接雇用に切り替えて欲しい」と要求に来たそうだ。明らかに前述の外人の影響を受けている。結果としてその学校はその2名の外国人教師との契約を解除し、本年度からはすべて派遣会社からとしたそうだ。二人の男性外国人に懲りた訳でもないのだろうが今度の2名は「素晴らしい女性外国人教師」と聞いた。女性だから問題が無いというのは間違っている。たまたまだろう。
・ 結構高い「管理費」を派遣会社が取っても企業も学校も「派遣会社の使い勝手の良さ」はあるのであり、特に永続性がない、内容に変化の要素が大きい場合などは「固定の正規職員を抱える」よりかは格段に事業継続に便利性をもたらすのである。
(学校社会の格差問題その2に続く)