2008年5月26日月曜日

5月26日(月)前歴換算および給与回復措置

前歴換算及び給与回復措置
・ まったく耳慣れない言葉であるが学校社会にはこのような規定がある。大阪私学経営者協会発行の資料があるくらいだから「重要な規定」であろう。最初この言葉を聞いたときには何のことかさっぱり分からなかったものである。
・ わかり易く言えば「専任教員になった時に当て嵌める初任給」のために「直前の職業」と「初任給与を徐々に専任教職員に合わせるような回復措置」のことである。しかしこれでも分かりにくい。具体例を上げた方が分かり易いか。
・ ある人が大学で教員免許を取り、教員となる資格を有していたが、一般の民間会社に就職して10年が経過した。しかし教師への思い絶ち難く、決断して会社を辞職し、ある私立学校に「講師」としての職を求めた。年令は33才の時である。本人は努力し、勤務状況が良く、指導力も高いと衆目一致した評価を受け、正式に3年後に「専任教諭」として採用されたと考えれば分かり易い。年令は36才になっていた。「さてこの人の専任教諭としての初任給料は幾らで、その後どのように上がっていくのでしょう?」と言う問題だ。
・ こういうケースもある。前述のケースと違い、3年の講師経験を踏まず、運よく直接「専任職員」として採用されたときには、この人のお給料はどうなるのかという問題である。前の会社は「おもちゃを作る会社で学校の教育とは全く関係ない経歴の人」だ。これを「前歴換算」と言う考え方で調整しなければ可哀想と言う発想である。そして前述した3年間常勤講師で頑張った先生との違いはどうなるのかという問題もある。
・ 逆の問題もある。過去ずーっと他の私学で頑張ってきたが訳あってそこを辞め、本校に就職したケースだ。言ってみれば「教師としてはベテランであるが本校では新任」だ。この先生のお給料はどうなるのか。前の学校の給与がそのままスライドというわけにはいかない。
・ 更にこういうケースもある。大学を卒業して5年間、職に付かず、外国を行ったり来たりして自由を謳歌した人が6年目に思い立って「正規職業に付くことを決心」し、見事、採用試験に受かり、私立高校に就職したケースだ。「無職の期間が5年」ある。この人の前歴をどう見るのという問題である。
・ ところがその私立高校には大学新卒で就職した先生がすでに勤務しており、まったく同じ年令ではあるが給料は違う。分かり易く言えば「5馬身の差」が付いているのだ。この5馬身は一生、「」として付いて回るのは些か可哀想だと言うことで、何年間で「並ぶ」ようにするのかという問題である。これが「給与回復措置」だ。とにかくややこしいのである。
・ 私は平成14年大阪府で初めて民間出身校長として府の職員に採用された。民間人から公務員になったのだが、この時に多くの他の校長の関心事は定年まで5年しかない「私の給料」のことであった。大別すると3種類あったような気がする。
・ 一つは「新規採用の教員レベル」・・・あり得ない話だ。そのような条件で来るわけがない。一つは「無給で来ると言う話」・・・まったくあり得ない話で、こういうことを言う人は全く分かっていない。一つは「企業と学校と両方からダブルで貰っていると言う話」でうらやましそうに、これは良く言われたものだ。要は最初の民間人校長の給料に他の校長は関心があったのである。結論は同年代校長と同じレベルの当て嵌めであった。即ち大学卒業して大阪府に勤務したと同じレベルの給与が支払われたのである。鉄鋼会社勤務であったが「前歴換算」はしないが、給与回復期間は「0」ですぐ通常の校長職の給与が支給されたのである。
・ 本校の給与回復措置は以下のようになっていた。まず「対象者は40歳未満で本校に就職した者、本校で採用される前に直前の職場を定年前に退職し、かつ本校の在職期間が10年以上見込める者、理事長が回復措置の適用を必要と認めた者の3パターン」である。ただし採用直前の職場を定年扱い又は退職勧奨で辞めた場合は退職金や、割増金を貰っているはずだから回復の幅は通常より小さくしている。
・ 「 3年で30%、5年で50%、8年で80%、10年で100%が回復内容の数値」である。このような前歴換算や給与回復措置は「優秀な人材を集めるための一つの方策」であったのだと思うが、余りにも今日的ではない。教員免許を有しているだけで、子育てが終わり、55才になったから「教員にでもなろう」となった人が本校の場合65才年令であるから残り10年あるから定年までには100%の給料となる。大学を卒業して30年以上継続して勤務してきた教員と同じ給料で良いのかと言う指摘もあろう。
・ 前歴が教員で他校から変わってきたと言うだけで100%保障と言うのは如何なものかという意見もある。あくまで本校での経験年数はゼロだ。見てみなければ分からない。公立の優秀な教員を60才定年前の58歳くらいで引っ張ってきたとして、残りが10年ないから回復はしませんでは誰も来てくれないだろう。色々あるのだ。
・ 「平成20年以降の採用者には前歴換算、給与回復措置の規定は反映させないように内規を変更」した。その代わり「専任教職員初任給決定基準」を設けて適用することにした。優秀な人には回復措置も何もない。最初から当て嵌めれば良いのだし、法律の改正で教員免許を有しないでも教壇に立てる時代となったのだ。飛行機に乗っていた女性が「しつけ教育」として小学校の先生になれたりする時代だ。努力したら給料が上がる時代になり、努力も成果も上げられない教員の給料は下がる時代となった。個々の教員の給与に差が生じる時代となった。「何時までも続く黴の生えた規定」は改めなければならない。